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米国遠隔医療の最新事情、地域格差は解決できるのか海外医療技術トレンド(22)(1/2 ページ)

日本では、2015年8月10日の厚生労働省通達を契機に動き出した遠隔医療。米国の最新動向はどうなっているのだろうか。

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遠隔医療は米国のヘルスIT戦略の目標実現のための基幹技術

 米国遠隔医療学会(ATA:American Telemedicine Association)は、「遠隔医療(Telemedicine)」について、患者の健康状態を改善するために電気通信により伝送された医療情報を利用することと定義している(関連情報)。他方、米国保健福祉省(HHS)の保健資源局(HRSA:Health Resources and Services Administration)は、「遠隔医療(Telehealth)」について、遠距離を介した臨床医療、患者・専門家の医療に関する教育、公衆衛生・保健管理を支援・促進するための電気情報通信技術を利用することと定義している(関連情報)。

 ちなみに日本国内では、日本遠隔医療学会(JTTA)が「遠隔医療(Telemedicine and Telecare)」について、通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為と定義しており(関連情報)、厚生労働省の通達では、情報通信機器を用いた診療を「遠隔診療」と称している(関連情報、PDFファイル)。

 本連載第1回で取り上げたように、米国では、遠隔医療技術を含むヘルスIT利活用にフォーカスした包括的な長期ビジョンを策定して具体的な施策を展開・評価・分析した上で次のアクションに移すというPDCAサイクルが確立している。

 現時点では、2015年9月21日に、HHSの国家医療IT調整室(ONC)が公表した「連邦ヘルスIT戦略計画2015−2020」(関連情報、PDFファイル)およびそれに基づく相互運用性ロードマップ1.0版(関連情報、PDFファイル)が、最新の国家計画を示している。

 同計画は、「質の高いケア、低いコスト、健康な住民、関与する人々」をビジョンに掲げ、「いつでもどこでもアクセスできる技術と保健情報の利用によって、個人と地域のヘルスケアと保健を向上させる」ことをミッションとしている。その上で、図1のような目標を掲げている。

図1
図1 「連邦ヘルスIT戦略計画2015−2020」の目標(クリックで拡大) 出典:HHS「Federal Health IT Strategic Plan 2015-2020」(2015年9月21日)

 遠隔医療は、これら4つの目標のうち「目標1:個人中心で自己管理による健康の促進」、「目標2:医療供給と地域保健の変革」、「目標4:国家のヘルスITインフラストラクチャの強化」を実現するための基幹技術の1つと位置付けられている。

 その後2016年8月12日、HHSは「eヘルスと遠隔医療」と題する報告書を公表し(関連情報、PDFファイル)、遠隔医療のステークホルダーが直面する政策課題として、以下のような点を挙げている。

  • 異なる保険者間の遠隔医療への保険適用における著しい変動性
  • 臨床医に対する州免許の要求事項およびその要求事項が臨床医に課す事務上の負担
  • 資格認定および特権付与
  • 手頃なブロードバンドへのアクセスにおけるギャップ

 米国の場合、医師、薬剤師、看護師など、主要な医療専門職の資格については、各州政府がルールを制定し運用している。医療行為として実施される遠隔医療の業務プロセスや使用される医療機器の管理、公的医療保険制度上の経済インセンティブなどのルールについても、州単位で決められている。従って、遠隔医療の普及率や普及推進施策に関しても、地域格差が存在するのが、米国の特徴だ。

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