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高精度技術はスマホから宇宙へ――中島田鉄工所オンリーワン技術×MONOist転職(9)(3/4 ページ)

日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第9回。今回は、スマホの極小ネジ製造装置から航空宇宙関連事業まで、高精度な加工・組み立て技術で挑戦を続ける中島田鉄工所を紹介する。

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宇宙開発、きっかけは「人の出会い」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟から超小型人工衛星を放出するミッションに、同社と東北大学が共同開発する「FREEDOM(フリーダム)」が選定されたのが2014年9月のこと。

 近年、人工衛星の需要が増す一方で、運用を終えた人工衛星が地球上空を漂う宇宙のゴミ(スペースデブリ)となり、重大な事故を引き起こす危険性が問題となっていた。FREEDOMには、同社と東北大学が共同で開発した膜展開式軌道離脱装置「DOM1500」が搭載されており、ISS(きぼう)から放出後に衛星軌道上において1.5m四方の薄膜を展開。宇宙空間にわずかに存在する空気の抵抗を利用して衛星軌道を離脱し、地球大気圏へ再突入・燃焼させることで人工衛星を消滅させるというものだ。

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NASAのWebサイトでも衛星軌道上を漂うデブリについて紹介されている(提供:NASA)

 DOMの開発は、東北大学の桒原聡文准教授からの依頼で2010年にスタートした。

 「桒原先生との出会いは偶然。彼が九州大学の大学院生だった2005年頃に、研究で使う部品の加工を手伝ったことから交流が始まった。当時から彼の優秀さはずば抜けており、本当は当社に入社してもらいたかった。その後も会うたびにスペースデブリをはじめとする宇宙の話を聞かされ、その熱意にほだされて協力するに至った。正直、宇宙開発よりも桒原先生の魅力でここまでやってきた」(中島田社長)。

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 人工衛星本体に対し、数倍の面積の薄膜を瞬時に展開する装置の開発には、同社の精密加工・組み立て技術が大きく貢献している。超小型人工衛星(CubeSat)の1U規格(10cm四方で1.33Kg未満)に装置をどう収めるか。打ち上げの衝撃に耐えつつ、極寒で大気もわずかな未知の宇宙空間で確実に展開するための装置作りは手探りで試行錯誤の連続だったという。

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 実証実験は、2017年1月16日にISSから放出されたFREEDOMが徐々に高度を下げたことからDOM1500の薄膜展開が成功したと予測。2月6日に軌道情報の提供が終了され、2月7日には大気圏再突入を果たしたことで実験の成功が確認された。

 「最初は桒原先生という人にほれ込んで始めた事業だが、開発で培ったノウハウを生かし、今後はビジネスへと結び付けていきたい。今後打ち上げられる人工衛星には、速やかに軌道から離脱させるための装置の取り付け義務化が国際的に検討されているという。低コストで打ち上げられる超小型衛星への関心も高まっている。近い将来、年間200基ぐらい打ち上げられるとの試算もある。新たなチャレンジの場として取り組んでいきたい」(中島田社長)。

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