“光のプロ”の遊び心が産んだ反射率99%ミラー――吉城光科学:オンリーワン技術×MONOist転職(7)(1/3 ページ)
日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく連載の第7回。今回は、超精密ガラス部品で世界的に高いシェアを持ち、常識を覆す超高反射ミラーなど特殊技術を有する吉城光科学を紹介する。
福島県のほぼ中央に位置する須賀川市は、ウルトラマンを産んだ円谷英二氏の故郷で、ウルトラマンの故郷「M78星雲 光の国」と姉妹都市提携を結んでいるというユニークな街。この須賀川市に本社を持つ光のプロ、吉城光科学は、超精密ガラス部品で高いシェアを持ち、アルミニウム製ながら反射率99%の超高反射ミラーも開発。高品質の製品を多く生産するために、独自の生産方法を編み出すなど、内外で高い評価を得ている。
薄ガラスの量産技術確立が原点
吉城光科学は、コピー機や複合機、レーザープリンター、DVDやBlu-ray Disc、プロジェクター、産業機械、自動車、医療機器など、あらゆる分野の超精密ガラス部品を手掛ける。直径2ミリ程度、厚さ0.1ミリというサイズの部品もあるそうだ。中でもコピー機や複合機、レーザープリンターなど光学OA機器に使われる反射ミラーでは、世界シェア約7割を誇る。現在の光学OA機器には反射ミラーを使わない方式もあるが、それでも毎月600万〜700万個を生産している。
圧巻なのは、反射率を99%まで高めたアルミニウムの超高反射ミラー(UHR)だ。アルミニウムの反射率は通常80〜90%程度。より高い反射率が要求される場合は、一般的には銀か銅を使用するが、価格はアルミニウムの数倍になってしまう。ところが同社の技術を使えば、安いアルミニウムでも、銀に匹敵するほどの高反射率を得ることができるのだ。
卓越した技術を持つ同社のスタートは1969年。創業者であり、現在会長である吉田俊夫氏は、もともとレンズ研磨の職人で、勤務していた会社が倒産したため、部下たちを連れて起業した。当初は双眼鏡やカメラのレンズなどの研磨を主としていたが、レンズの生産は韓国や台湾で行われることが多くなり、1976年、研磨の対象を曲面から平面に切り替える決断をした。当時は液晶時計が出始めたころで、まだ誰も成し得ていなかった、大きさも厚みも名刺程度のガラスの量産技術を確立。これが今に通じる技術の原点となっている。
光学OA機器向け反射ミラーの製造を開始したのは1981年。この反射ミラーは対応している用紙サイズに応じて、例えばA3ならば長さ約30cm、幅数cmの細長い形状であるため、研磨するとねじれが生じてしまう。この問題を克服して量産を可能にし、コピー機の普及の波を予測したことで、現在のシェアを築いた。
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