“東大の”坂村健氏による最後の「TRON Symposium」、動く「IoT-Engine」が登場:2016 TRON Symposium(1/2 ページ)
トロンフォーラムが主催する「2016 TRON Symposium−TRONSHOW−」は、TRONプロジェクトリーダーの坂村健氏が東京大学教授として臨む最後のTRON Symposiumとなる。坂村氏は2017年3月末に定年退官を迎えるが、同年4月に東洋大学が新設する情報連携学部の学部長に就任する予定だ。
トロンフォーラムは2016年12月8日、東京都内で「2016 TRON Symposium−TRONSHOW−」(同年12月14〜16日、東京ミッドタウン)記者発表会を開催。2016年のTRON Symposiumの見どころや、TRONプロジェクトの最新トピックスなどを発表した。
東京大学大学院情報学環 教授でTRONプロジェクトリーダーの坂村健氏は「2016年のテーマは『IoT動く』。TRONSHOWが1986年に初開催して約30年が経過して、IoT(モノのインターネット)がもはや研究レベルではなく実用レベルになり、世界的にもブームになっているからこそ、このテーマとした」と語る。
2016年のTRON Symposiumは「OPEN IoTシステム展」「Open IoT Platform×IoT-Engineパビリオン」「2020年に向けた社会全体のICT化推進パビリオン」「公共交通オープンデータパビリオン」などの展示と各種セッションで構成。2016年に入ってまさに動き出したIoTの活用に役立つTRONプロジェクトの成果の数々が披露される。来場者数は約1万人を見込んでいる。
機能安全RTOS「TRON Safe Kernel」を2017年に公開
坂村氏は組み込みリアルタイムOS(RTOS)である「TRON」と「T-Kernel」のロードマップを示しつつ「2015年から大きな変化はない」とした。また組み込みリアルタイムOSの2016年調査で、TRON系OSが61%のシェアを獲得したことも報告。「扇風機の制御から、スマートフォンの電波制御まで、ロイヤリティーフリーのTRONは組み込みリアルタイムOSとして幅広く採用され続けている」(同氏)。
T-Kernel関連ソフトウェア利用契約組織の所属国数が2015年の78カ国から2016年は83カ国に、T-Kernel関連ソフトウェアのダウンロード数も2015年の1万635組織から2016年は1万11393組織に増えた。坂村氏は「先進国では既に広く利用されているところに、アフリカなど新興国での利用も始まっている」と説明する。
また、2015年10月から仕様策定と開発を始めた組み込み機器向け機能安全RTOS「TRON Safe Kernel」については、2017年内に公開する方針を明らかにした。T-Kernel 2.0仕様をベースに、一般産業機器向け機能安全規格であるIEC 61508に準拠するRTOSとして、日立製作所、ルネサス エレクトロニクス、日立超LSIシステムズが仕様書を開発中である。第三者認証機関による、IEC 61508で安全要求レベルが最も厳しいSIL3で、プロダクト認証を取得する予定だ。「欧州が産業機器を輸入する際にIEC 61508への準拠を求めるようになっているが、5億円ともいわれる第三者認証のコストが高過ぎることが国内製造業にとって問題になりつつある。トロンフォーラムが第三者認証を取得したRTOSを公開すれば、その問題を解決できる」(坂村氏)という。
また2015年のTRON Symposiumで構想を発表したIoT機器開発のための標準開発環境「IoT-Engine」は、既に製品化の段階に入っている。坂村氏は「IoT-Engineは、リチウムイオン電池1個で何年も動かすようなIoTのエッジノードを開発するのに重要な役割を果たす。今回のTRON Symposiumの展示会場では、IoT-Engineを使ったさまざまな動展示を実際に見られる」と強調する。
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