「脱紙」の流れを覆せるか、エプソンのオフィス向け製紙機が目指すもの:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
セイコーエプソンとエプソン販売は、乾式オフィス製紙機「PaperLab A-8000」を製品化し、2016年12月から販売を開始する。紙の持つ環境面での問題などを取り除くことで、シンプルなコミュニケーションが可能な“紙の価値”の再発見に導き、3年後に100億円の売上高を目指す。
セイコーエプソンとエプソン販売は2016年11月30日、2015年11月に技術発表を行った乾式オフィス製紙機「PaperLab A-8000」を製品化し、2016年12月から販売を開始すると発表した。オフィス内で紙の循環サイクルを作ることで、環境問題などへ気兼ねなく紙を利用することが可能になる。
水を使わない紙の再生
今回、セイコーエプソンが開発したオフィス向けの製紙機「PaperLab A-8000」は、オフィスで生まれる使用済みの紙を原料とし、文書情報を完全に抹消した上で新たな紙を生産するというオフィス向け製紙機である。オフィスに設置できるように、従来は必要だった水を使わずに、紙の再生を行える点が革新のポイントである。
エプソン販売 代表取締役社長の佐伯直幸氏は「エプソングループでは『省・小・精』を核にさまざまな革新を進めてきたが、その中で紙とのかかわりも続いてきた。デジタル化が進む中でも紙のもたらすシンプルなコミュニケーションの価値というのは普遍的なものだ。一方で、紙をオフィスで使うためには森林伐採やCO2排出などマイナスの影響もあった。オフィスで使える製紙機を開発することで、循環型のオフィスを実現できれば『紙の価値』を気兼ねなく使うことができる」とオフィス向けの製紙機の意義について述べている。
「PaperLab A-8000」は、こうしたリサイクルを実現できる点に加えて、機密文書の廃棄を企業や自治体などの外に出さずに行えることも新たな価値である。さらに、「PaperLab A-8000」で作成する紙は通常のコピー用紙の他、名刺に使用できるような厚紙や色紙など用途に合わせた多様な紙の生産が可能である利点も持つ。ちなみに生産スピードについては、最初の1枚目の紙を生み出すまでには約3分かかるが、それ以降はスピードを上げることが可能で、A4用紙であれば1時間あたり約720枚を作成できる。
ちなみに、今回の新製品発表会において配布されたニュースリリースや関係者の名刺などもこの「PaperLab A-8000」で作成したという。
セイコーエプソンでは、オフィスでの紙の再生を目指し2011年から基礎開発を開始。そして「PaperLab A-8000」の製品化に向けて開発に成功したのが「ドライファイバーテクノロジー」である。
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