CFRPのマルチスケール解析で分子から構造まで、3Dプリントも:CAEイベントリポート(2/4 ページ)
CFRPなどの複合材料は内部構造が複雑なため、分子スケールから考慮しなければ正確にシミュレーションすることは難しい。東京理科大学の松崎亮介氏が、ダッソーのカンファレンスでその取り組みについて語った。
メゾスケールでは、板厚方向については全てモデリングするため、2次元の周期境界条件を付けて、板剛性の算出を行った。縫合糸が貫通している付近には、繊維束が押しのけられて樹脂リッチな領域ができる。また積層板にはうねりが発生する。これらの欠陥についてはメゾスケールでモデル化した。積層板のうねりについては、CTで断面をいくつか取り、応答局面法を使ってうねりの近似モデルを求めた。
なおリッチ領域なしでマクロスケールにおける構造解析を行うと実験と一致しなかったが、リッチ領域を考慮すると一致したという。
マクロスケールではメゾスケールで得られた板剛性を使い、3点曲げのシェル要素のFEMを行った。またその結果を実験と比較した。なお不整を入れないものと入れたものでシミュレーションしたところ、以下の図のようになった。
導入しない場合は材料特性を過大評価していたが、導入したものは1.6〜3%以内のずれで一致した。このように「シミュレーションを使うことで、材料物性を得るところから解析で行うことができる」(松崎氏)という。
分子スケールから解析する
複合材料においては繊維と樹脂の界面の密着性などはとても重要なパラメータとなる。また繊維の表面を官能基修飾した状態も、分子レベルでなければ捉えることは難しい。そこで松崎氏は、分子動力学法を用いて、繊維と樹脂の界面における強度を求めた結果を紹介するとともに、得た物性値を上述の有限要素法モデルに与えた結果について紹介した。
今回は炭素繊維とエポキシ樹脂を用い、界面の物性値を求めた。亀裂が入ると想定される箇所に粘着要素を用意し、亀裂の間隔が広がっていくのに比例してかかる力が強くなり、ある値を超えると下がっていく3角形のグラフになるモデルとした。なお、このグラフの形状や、物性値をどのようにFEMに持ってくるのが妥当かも含めて検証中だという。
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