マシンやレースに直接関係のないスポンサーはF1にどう役立っているのか:モータースポーツ(1/2 ページ)
F1についてはほとんど知らない、運転と量産車が好きなだけの記者が、日本グランプリ直前の鈴鹿サーキットに行ってきた。本稿はF1そのものではなく、マシンやレースに直接関係のないスポンサーがチームにどう関わっているのか紹介する。
F1日本グランプリ直前の鈴鹿サーキットに行きませんか――。すてきな取材案内がMONOist編集部に届いた。しかも、メルセデスAMGペトロナスのピットガレージを見学できるという。F1についてはほとんど知らなかったが、面白そうなのと、個人的にドイツ車びいきなので、浮かれて取材の参加を申し込んだ。
取材の企画元はエプソン販売である。エプソンは2年前からメルセデスAMGペトロナスのスポンサーなのだそうだ。モータースポーツのスポンサーといえば、マシンやレース運営に直接関係する製品や技術を持つ企業が思い浮かぶ。
エプソンといえばプリンタやスマートグラスだが、F1にどう関わっているのかサッパリ想像がつかない。首をひねりながら鈴鹿サーキットに向かった。
ヒューゴ ボスのシャツに身を包むチームメンバーたち
鈴鹿サーキットの厳重なゲートをくぐると、F1のチームメンバーと思しき人々がピットガレージに出入りしたり、チーム専用のテントでランチを楽しんだりしている様子が見えてきた。
目的地であるメルセデスAMGペトロナスのガレージの隣では、目に痛いほどの真っ赤なツナギを着た人々が行きかう。これに対し、メルセデスAMGペトロナスのユニフォームは白黒で、しかも上はワイシャツで、下はパンツなのでかなりモータースポーツ感が薄い。なかなかシックで落ち着いて見える。
ユニフォームの首の後ろや胸元にドイツのファッションブランド「HUGO BOSS(ヒューゴ ボス)」の刺しゅうが見えた。チームの担当者であるお兄さんに聞くと、ヒューゴ ボスはスポンサーで、ユニフォームも同社製なのだという。レースチーム向けの高機能なもので、ただのワイシャツとパンツではないそうだ。
チームのお兄さんは「これクールだろ」と自慢げだ。気に入ったものを着て働けるのは気持ちがいいに違いない。士気が上がりそうだ。
ヒューゴ ボスは33年間、マクラーレンのスポンサーを務め、2015年からメルセデスAMGペトロナスのスポンサーとなっている。シックで落ち着いたユニフォームはF1を観戦する人々の目にも止まり、そのうち何割かの「ヒューゴ ボス、いいな」と思った人が実際に服を買いに行こうと興味を持つ。また、単にフォーマルだというだけでなく、スポーティーなイメージも定着できるだろう。
クルマと縁遠いファッション業界でも、チームに密着してサポートしていることを間近で理解した。果たしてエプソン製品はF1チームでどう使われているのか。
スマートグラスで分かりやすいプレゼンテーションに
最初のエプソン製品「BT300」はピットガレージツアーで登場した。ピットガレージツアーはスポンサーやVIPがピットガレージを見学するイベントで、各チームがそれぞれ実施している。見学に加えて、チームやマシン、レース中の役割分担などについて詳しく紹介するプレゼンテーションも行われる。メルセデスAMGペトロナスには、メルセデス・ベンツ日本が募集した一般客100人を含め大勢が訪れる。
ピットガレージツアーはかなり騒がしい中で実施する。取材で鈴鹿サーキットを訪問した時も、マレーシアグランプリで健闘したマシンを組み立て直す真っ只中だったので、決して静かではない。エンジンを試運転したりすると、耳元で大声を出しても聞き取るのが難しい程だ。
そのような環境なので、プレゼンテーションは担当者がマイクを通して話す声をヘッドフォンで聞く形式だ。ピットガレージツアーを運営する担当者は音声のみの説明で十分に伝わっているのか懸念しており、プレゼンテーション中にイラストや図、動画を見せるためにスマートグラスを採用した。
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