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“モノづくりの神髄”を理解すれば、必ず原価は下げられる!【中編】実践! IE;磐石モノづくりの革新的原価低減手法(13)(1/4 ページ)

革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説する連載「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」。原価低減活動に役立つ“モノづくりの神髄”を紹介する3回シリーズの中編となる今回は、「リードタイム短縮」について考えます。

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原価低減

 前回の前編では、作業時間の削減=原価低減とは必ずしもならないこと、作業改善の効果はどのようにすれば得られるかについて説明しました。今回の中編では、「リードタイム短縮」について考えてみたいと思います。

 リードタイム短縮に取り組んでいる企業は多くあります。しかし、「リードタイム短縮」は改善手段にすぎないのですが、目的のごとく捉えられているため“何のために……”という目的が理解されないまま進めていることで経営的効果もさほど得られず、「リードタイム短縮」の成果も上がらず、あまり上手くいっていないと感じています。

 そこで、「リードタイム短縮」についての認識を新たにして、あらためて取り組んで頂き、大きな経営成果を挙げていってもらいたいと思っています。リードタイム(Lead Time)の種別は、一般的に以下のように区分しています。

  • 生産リードタイム:生産着工から完成までの期間
  • 商品リードタイム:受注から納品までの期間
  • 開発リードタイム:開発から納品までの期間

1.「リードタイムの短縮」とは「工程性」の改善を推進すること

 通常は、「生産性」といえば、ほとんどの場合は「作業性」として捉えられる場合が多いものです。しかし、このような捉え方で作業性の向上を目指して改善を進めていくと、皆さまもお気付きのように、いまひとつ全体としての生産性が思うように向上しないということが次第に分かってきました。このような状況から考えられることは、「生産性」という指標に、もう1つの生産効率の側面として「工程性」という考え方を付け加えて、以下の式(1)にあるように「総合生産性」として評価する側面があることにたどり着きます。

  • 総合生産性=[個別の作業方法の良しあし;作業性]×[全体の流れ(つなぎ)の良しあし;工程性]……(1)

 この考え方(指標;総合生産性)によって、モノづくりを主体とする生産システムや、いわゆる“良いモノ(Quality)を安く(Cost)速く(Delivery)造る”という広義の生産管理システムの評価法として、「総合生産性」は極めて効果的であるということがいえます。

 例えば、従来の主要な改善方法であった「作業性」の向上は、主として加工や組立作業の時間短縮の改善や品質向上でした。ただし、作業時間の短縮に関していえば、生産着工から完成までの期間(生産リードタイム)の短縮は重要な課題ではありますが、個々の作業速度の短縮は必ずしも必要条件ということではなく、部分的に作業速度が速いが故に、かえって生産システム全体のスピードを損なっている例も多くあります。「総合生産性」では、このあたりを含めて適切に評価することが可能となりました。

 「工程性」という新しい側面から全体を見直すことにより、多くの原価低減要素が潜んでいることが分かり、このアプローチが「リードタイム短縮」へと発展していったといえます。この事実は、IE(Industrial Engineering)をベースとした個別改善による原価低減に行き詰まった状況を打破していくための新しい視点として、多大な成果を生み出していきました。具体的には、リードタイムの短縮や仕掛かり削減などによる新しい原価低減手段として着目されるようになりました。

 また、改善対象範囲も、製造現場に特化して考えるのではなく、例えば“材料・部品などの検収〜製品入庫〜発送”までを製造ラインとして捉える考え方などもさらに大きな成果へとつながっていきました。この時、現場作業以外の検収作業、倉庫管理作業、発送作業などの業務内容を明らかにしていく必要があり、「(業務の)見える化」が改善に先立ちスタートしました。

 「工程性」を一言でいえば、仕事の遅れもモノの滞りもなく、製造工程を一気に通過していく理想の状態を指します。従って、「工程性」の向上は、“遅れや滞りをなくす”ことが最大の改善ポイントとなります。その具体的な改善手段としては、区分すべきことではありませんがあえて挙げれば、“仕事の遅れをなくす”には、同期化、リードタイム短縮とその変動の安定化などが挙げられます。また、“モノの滞りをなくす”には、仕掛かり削減、工程間のつなぎの改善などの手段が考えられます。

 また、「工程性」は、所定の工程をいかに能率良く(ムダ無く)通過したかということですから、その評価としては、式(2)が最もふさわしいとされています。

  • 工程性=リードタイム÷加工(作業)時間……(2)

 この評価指標を利用する上での留意点は、リードタイムに対する加工(作業)時間の倍数で評価しているところです。このため、動作のムダ排除などが十分に行われ、最少化された「作業時間」の数値で算出しなければ正しい評価は得られません。また、先述した通り、昨今、改善手段であるべき“リードタイム短縮”や“仕掛かり削減”が注目されて改善目的のごとく扱われていますが、「工程性」という概念からそれを理解すれば、その目的と着目されている理由を容易に理解することができるのではないでしょうか。

 さらには、リードタイム短縮の成果は、リードタイム短縮や自社の利益増大そのものだけではなく、そのことが直接的に顧客にとっても有益でなければなりません。例えば、顧客への迅速な対応により、顧客が製品倉庫を準備しなくてよいなど、顧客と自社の双方のメリットにつながっていかなければなりません。

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