デンソーの新事業8分野、一気通貫ソリューションに向け「自前主義から脱却」:イノベーションのレシピ(2/3 ページ)
デンソーが、主力事業である自動車部品の技術を基に他分野へ展開を広げている新事業の取り組みについて紹介。2011年以降新たに立ち上げた8分野では、ソリューションビジネスを視野に入れ、自前主義から脱却しパートナー企業との連携を重視する方針だ。
新事業8分野が2020年までの約350億円分の成長をけん引
デンソーにおける新事業とは、自動車部品や自動車用品以外の事業のことを指す。現在の新事業の売上高は、全体の1.4%に当たる650億円弱にすぎない。さらに、この650億円弱のほとんどを、子会社のデンソーウェーブが扱う産業用ロボットや制御機器、自動認識機器といった産業機器、業務用の冷暖房機器やエコキュート、HEMSなどの生活関連機器が占める。
今回の会見で紹介された「マイクログリッド」「セキュリティ」「ヘルスケア」「農業支援」「コールドチェーン」「電動アシスト」「情報ソリューション」「バイオ」の新事業8分野は、現時点ではまだ大きな規模に育ってはいない。その一方で、2020年の新事業の売上高目標は1000億円であり、約350億円の成長をけん引する役割を期待されているのも、新事業8分野ということになる。
会見では新事業8分野のうち「セキュリティ」「情報ソリューション」「農業支援」「電動アシスト」「ヘルスケア」における最新の取り組みを紹介した。
まず「セキュリティ」では、自動車の運転支援システムのセンサーに用いているレーザーレーダーとカメラの技術を応用したセキュリティシステム「ZONE D」を商品化している。
ZONE Dは、あらかじめ設定した見守りエリアへの不審者の侵入を検知すると、即座に警告や威嚇を行い、セキュリティ担当者にもカメラ映像などで状況を知らせる。コンセプトは「未然防止」であり、「建物にたどり着く前に侵入者を立ち去らせ、犯行そのものが行いようにする」(デンソー 新事業推進室長の永井立美氏)。
他のセキュリティシステムとの組み合わせによるソリューションビジネスに注力しているのもポイントで、防犯設備士の資格取得者による現場診断から、システム設計、施工、保守・メンテナンスまでを一気通貫で提案できるようにしている。自動車販売店を中心に、既に200カ所以上に導入済みで、今後は鉄道踏切や高速道路などへの展開も計画中だ。さらに、日中は来店顧客をスムーズに出迎える「おもてなし支援システム」としての運用も想定しているという。
「情報ソリューション」では、カーナビゲーションシステムの開発などで培ったHMI(Human Machine Interface)技術を基に開発した、タブレット端末による電子回覧板システム「ライフビジョン」を展開している。永井氏は「高齢者の利用を想定し、とにかく使いやすいのが特徴」と説明する。香川県直島町での行政情報配信事業を皮切りに、既に3つの自治体に導入されており、16の自治体で実証実験を実施している。
「農業支援」では、同じ新事業の先輩に当たる制御機器と、自動車のセンサー、カーエアコンの気流解析などの技術を組み合わせて開発した「プロファーム」を販売している。トマトのハウス栽培を中心に108件の導入事例があるという。プロファームの事業展開では、愛知県を中心に展開するトップクラスの種苗販社・トヨタネと提携し、栽培プロセス全体のソリューション提供にも乗り出している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.