すごく硬い金属でもおまかせ! 火花飛び交う放電加工の現場、見たことある?:ママさん設計者の「モノづくり放浪記」(4)(5/7 ページ)
ファブレスメーカーのママさん設計者が、機械系モノづくりの“生”現場を渡り歩き、ありとあらゆる加工の世界を分かりやすく解説していく連載。今回は放電加工を得意とする金型製作所のノムラを紹介する。
ワイヤーカット放電加工機で効率よく
変わってこちらはワイヤーカット放電加工機です。ソディックの「A350」を筆頭に「AP330」「AQ327L」など、合計5台が稼働しています。いずれも最大加工範囲は310×210×80、加工精度は±0.005をうたっています。
型彫り放電加工では、都度、加工したい形状に合わせた電極を作るのに対して、ワイヤー放電加工では、ワイヤーを加工機に仕掛けて電極として使用します。この電極用ワイヤーは真ちゅう製で、細いものではφ0.05mm、太いものでもφ0.3mm程度の極細のワイヤーが使われます。加工の原理は先ほどの型彫り放電加工と同じなので、電極ワイヤーと加工物の間に電圧をかけて火花を起こして加工していきます。加工物の移動はNCプログラムで指示して行います。
ワイヤーカット放電加工は、ちょうど、テンションをかけた糸を使ってゆでたまごを飾り切りするイメージに似ています。ゆでたまごの糸切りと違うのは、ワイヤーと加工物の間に放電ギャップを設けることです。
また、こちらの加工機は最大80mmまでの厚手の加工物が切断できる仕様ですから、エンドミルでは刃長が足りなくて出来ない「深くて狭いスリット加工」も、ワイヤーカットなら余裕で可能です。従って、「切断」においては、ワイヤーカットは非常に効率のよい加工であると言えますね。
通常、ワイヤーカットをスタートする位置にはあらかじめ細穴加工機やフライスで小さな穴を開けておき、上から下へワイヤーを通します。穴を通ったワイヤーは自動的に結線されて一筋になります。
ノムラでは、ワイヤーカットの加工液に純水を使っています。加工物を治具にセットして純水を満たし、加工がスタートすると供給側のボビンが少しずつ回転してワイヤーが繰り出され、加工が終了するとワイヤーは切断され、加工物を治具から外して取り出します。消耗したワイヤーは回収側に用意した箱に収められ、まとまったところでリサイクルに出されます。
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