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産業用UAVから始まる、デンソーの新たなロボット事業(2/3 ページ)

デンソーが2016年4月に設立した「Robotics開発室」は、産業用ロボット以外の分野に、同社が培ってきた制御技術をロボットとして展開することを目指している。第1弾製品となるの産業用UAV(ドローン)は、競合他社のドローンにはない姿勢制御と運動性を特徴に、道路橋などの社会インフラ点検用途での展開を目指す。

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「D-CORE」による姿勢維持と運動性

 HDC01の最大の特徴は、デンソーが開発した姿勢維持と運動性を制御するコントロールユニット「D-CORE」である。慣性センサーや高度センサーなどを使って、4個のローターのピッチを状態に合わせて変えられる可変ピッチ機構は、産業用マルチコプターでは初採用となる。

「D-CORE」による可変ピッチ機構
「D-CORE」による可変ピッチ機構(クリックで拡大) 出典:デンソー
「HDC01」のローター「HDC01」のローター 「HDC01」のローター。ピッチを可変制御できる(クリックで拡大)

 一般的なマルチコプターは、複数個搭載するローターのピッチを変えない固定ピッチになっており、風や気流などの外乱によって姿勢が乱されると、元の位置/姿勢に復帰するのに数秒〜数十秒かかる。しかしD-COREによる可変ピッチが可能なHDC01の場合、外乱からの復帰は数秒以内で済む。

可変ピッチと固定ピッチの比較
可変ピッチと固定ピッチの比較(クリックで拡大) 出典:デンソー

 可変ピッチの特徴が最も大きく出るのが、上昇と下降の運動性だ。固定ピッチのマルチコプターは100mを上昇/下降するのに2〜3分かかるが、HDC01は20秒で上昇/下降できる。

 さらに、ローターが4個で済ませられる点も可変ピッチの強みによるところが大きい。加藤氏は「一般的なマルチコプターは、4個あるローターのうち1個でも壊れると墜落してしまう。そのため、ローターを6〜8個に増やしていることが多い。HDC01のローターは最低限の4個だが、もしローターが1個が壊れても墜落せず、軟着陸することができる。UAVやドローンのエネルギー効率や輸送重量に関わる揚力を高めるにはローターの羽根の直径を大きくする必要がある。そのことを考えるとローターが4個で済むことの効果は大きい」と強調する。

 HDC01の仕様では、搭載重量が2kg、飛行時間が9分半となっている。固定ピッチの産業用UAVでみられる、10kg近い搭載重量や、15分という飛行時間と比べると物足りない性能だ。「モーターの実力値的にはもっと重いものを輸送できるが、姿勢制御にモーターの能力を割り振っているためこの仕様に抑えている。飛行時間については、UAVで必ず行う上昇と下降の時間が短くて済むので、実質的には変わらないと考えている」(同氏)。

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