イノベーションと幸福の条件には共通点がある?:zenmono通信(2/4 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、ロボット工学や脳科学の視点から幸福の“因子”を探し続ける幸福学の第一人者である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司教授にお話をお伺いした。
enmono SDMを学んだ先はどうなっていくんでしょう? どこかの企業に入る道へ進むんでしょうか?
前野 社会人学生が多いので、会社から来てその会社の中にこの考え方を埋めこんでいくという人もいますし、起業する人もいるし、コンサルとか省庁とかいろいろいますね。
前野 企業に戻って苦労しているっていう学生もいます。企業文化の中でいくら新しいことをやろうとしてもできないと。でも頑張ってその企業を変えつつあるという人もたくさんいますね。ある企業から何人も来ているところがあるんですよ。多いところだと既に5人とか10人が修了生になっていて、そこで集まってその企業の文化を変えようという活動をする。
前野 そうするとその上司も加わって何重もの輪になって、いい感じで進め始めています。1学年77人なので、10年やってもたったの770人。日本を変えるにはちっちゃいなと思っていたんですけど、だんだん火が付いて……、だんだん種火が広がり始めたっていうのは本当に実感してますね。
enmono われわれも同じようなことを感じていて、(enmonoの経営者向けセミナー「zenschool」の)卒業生が最初4人、8人、16人と増えていく中で……、最初は「マイクロモノづくりってなに?」っていう町工場の方が“ワケ分かんない”みたいな感じですが、数が増えてくると町工場同士がつながっていくんです。
前野 ああ、いいですねぇ。
みんなが元気になるモノづくり
enmono 先ほどロボットのお話がありましたが、そこから人の心に焦点が当たって、今やられているのが幸福学ですね。
前野 そうですね。今は幸福学に力を入れていますね。
enmono 幸福学というのは、分かりやすく言うとどういうものなんですか?
前野 ベースは心理学とか統計なんですけど、「人々はどうすれば幸せになるのか」というのを体系的に明らかにしていきたいという学問ですね。幸福学という言葉はもともとなかったんですけど、心理学で「人はどうなれば幸せか」というのは結構分かってるんですよ。日本では少ないですけど、アメリカとかヨーロッパではハピネススタディとかウェルビーイングスタディ、あるいはポジティブ心理学といって、多くの研究が行われています。「収入がどれくらいなら幸せになれる」とか、「親切な人は幸せ」とか、「感謝してると幸せ」とか、「自己肯定感が高い人は幸せ」とか……、そんな「何かと幸せは関係している」っていうデータは結構あるんですよ。あるいは因果の研究や、国際比較。学者がそういう研究をたくさんやっているんです。
前野 それだけだとぶつ切りの細かいデータなので、SDMとしては、個々の研究をつなげる研究をしています。要するに、みんな幸せになりたいじゃないですか。それにあらゆるモノづくりとかサービスづくりは人々を幸せにするためにありたいじゃないですか。幸せっていうのは、ちゃんと分解して変数にして自分の人生デザインにもモノづくりにも生かせるようにしたい。それが僕の言ってる幸福学です。普通の心理学研究と応用分野をつなげたようなイメージですね。
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