サイドミラーなしのクルマが解禁、鏡がカメラに置き換わるとどうなる?:人とくるまのテクノロジー展2016(2/2 ページ)
2016年6月から日本国内で“ミラーレス車”の公道走行が解禁になる。車両外部に装着したカメラで後方/後側方の間接視界を確保する代わりに、サイドミラーをなくすことが認められる。カメラに置き換われば、空気抵抗の低減やミラー分の軽量化を図ることができる。夜間の視認性向上や、運転支援など安全面の進化も見込まれる。
空気抵抗の低減や軽量化と画像認識技術の活用を同時に実現する
例えば、車線逸脱警報や車線維持支援のステアリング制御は前方のカメラで検知した車線を基にしているが、前方車両との距離によっては十分な長さの白線を検知できない場合がある。
サイドミラーをカメラで代替すれば、前方監視用カメラよりも車線を検知しやすくなるという。
これ以外にも、後側方から接近する車両を検知してドライバーに注意喚起するといった運転支援での活用を見込んでいる。しかし、車線逸脱警報や車線維持支援、後側方からの接近車両を知らせる注意喚起は、ミラーレス車に限らず搭載されている運転支援機能でもある。
ミラーレス車のメリットは、サイドミラーを廃することによる空気抵抗の低減と軽量化と、運転支援機能の搭載を同時に実現できる点だといえそうだ。死角低減のため大きなミラーを搭載するトラックやバスでも、ミラーレス化の需要が高いという。
「壊れたら、すぐに修理してください」
メリットがある半面、多くのドライバーが気にするのが「カメラの故障や破損の場合にどうするのか」という点だろう。カメラの故障や破損にどう対応するのか、市光工業やヴァレオの説明員に人とくるまのテクノロジー展で尋ねた。
共通の答えは「サイドミラー代わりの映像が見られなくなった後、ドライバーの自宅や修理工場にたどり着くまでの間に関する車両の規定はない。速やかに修理してもらうしかない」というものだった。ミラーレス車のカメラに限らず、サイドミラーが破損した場合であっても、そのまま家に帰るなり修理工場に駆けこむしかないのは同じだといえる。
ミラーレス車の対策としては「高級車種であればコストよりも機能の維持を優先して予備のカメラも装着するかもしれない。また、後付け可能な補助用のミラーが付属するということも可能性としては考えられる」(ヴァレオの説明員)という。
ミラーレスにできるのは、国連の基準を満たした場合だけ
日本国内でミラーレス車として公道を走るのを認められるのは、国連が定めた間接視界に関する基準を満たした場合だけだ。基準に満たない場合は「カメラとサイドミラーを併用しなければならない。適当なカメラをポン付けしてミラーレス車、とはいかない」(国土交通省)という。
日本は国連の「車両等の型式認定相互承認協定」に加入しており、協定規則を段階的に採用している。ミラーレス車に関する基準は間接視界に関する協定規則の一部だ。2016年6月中に間接視界に関する協定規則を採用し、道路運送車両の保安基準を改正する形で国内でミラーレス車の走行を認める。
協定規則では画質、取り付け位置、表示時間、倍率などが規定されており、サイドミラーと同等の視界を確保する必要がある。
規則では例えば、夜間の走行中で何も映っていないのかと思いきや実はカメラが壊れていた……という事態に備えて、カメラの故障を明確に表示するよう定めている。
また、カメラのフレームレートは最低でも30Hz以上で、明るさが少ない環境下であっても少なくとも15Hz以上とし、滑らかでスムーズな映像が表示できるようにする。遅延時間は17〜27度の環境で200ms以下に抑えるよう求める。この他にも、耐衝撃性などに関する試験についても定められている。
ミラーレス車が市場に登場するのは「日欧の市場向けで2〜3年以内の見通しだ。規定への対応が遅れている北米では、日欧よりもミラーレス車投入が遅れそうだ。自動車メーカーは当面の間、ミラーレスと従来のサイドミラーでグレードを分ける形になるだろう」(ヴァレオの説明員)。
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