設計者によるPDM導入で大事なフォルダ構成検討: 3D設計推進者の眼(10)(3/4 ページ)
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は設計者のためのPDMにおける構造について説明する。
最適な3DCADデータ管理ツールの選定
ここまでお話しした「自社の3DCADデータ構成」と「3D CADデータ運用管理方法のあるべき姿」が実現できるシステムを選定することが必要です。また将来の拡張性も考える必要はあるでしょう。
PDMシステムは、3D CADメーカーと同一メーカーのシステムもあれば、それぞれ異なるメーカーが開発販売していることもあります。マルチCAD対応のものもあれば、そうでないものもあります。また、簡易的で安価なシステムから高額なシステムまで幅広くあります。自社の運用に適したPDMを購入するためには、それらの評価をする必要があります。
私の選定基準では、以下を必須項目としました。
- 3D CADとのマッチング(3D CAD製品・バージョン)
- 版管理ができること
- ライブラリが構築と管理(ワークフロー)ができること
- カスタマイズを行わず運用を行うことと、将来の拡張性を持つ
- 将来はPDMから生産管理システム連携をしたい
- 将来は生産管理システムから3D CADデータに属性を持たせたい
RFPを作成して評価選定までできればとも思いますが、3D CADデータを中心に管理を行うPDMシステムであれば、今や3D CADのアドイン機能的なパッケージ製品にもなっています。今回の導入では、RFP作成には至りませんでした。PDMシステム導入は簡単なものではなくプロジェクトであり、人・モノ・金が必要です。
このプロジェクトを成功させるには、以下が必要です。
- PDMでやりたいことをはっきりとさせる
- PDM選定は、必ずユーザーが参加する
- PDMメーカー・販売会社のサポート、ユーザー三位一体の協力体制の構築
- 計画性(企画・選定評価・導入・評価・将来展開)
プロジェクトメンバーに中立的な立場で、3D CADやPDMについて知識を持っている人がいるとさらに良いでしょう。ユーザーであれば、現状の運用に集中してしまう、メーカーや販社のサポートであればその技術内容やコストに集中してしまう中、アドバイザーとしての中立的な第三者の存在は、現状運用を理解した上で、あるべき姿を明確にしながら、PDM構築に向けて、大きな力となってくれることでしょう。
また私の場合、今回のPDM導入において既存データベースからの3D CADデータの移行はありませんでした。ただし、データ移行がある場合は、移行するデータの整理、移行ツールの評価選定、移行計画の策定、移行の実施、移行後の評価などについても検討しなければなりません。つまり、プロジェクトの難易度が高くなり、日程も長期化することになります。
PDM導入前のまとめ
3D CAD運用展開において、何もかもがうまくいっているならよいのですが……、3D CAD設計をする上での現状課題を見直すために、課題は何かということを見つけることと、3D CADデータの管理系の問題をPDMシステム導入によって解決できるようにしていかなければ、問題は解決できないばかりか、PDMという新たなシステムによって、問題が大きくなるかもしれません。
これまでお話ししてきたように、私は3D CAD運用において、新規設計と流用設計の流れについて準備した結果を、PDM導入検討時に生かしました。以前のPDM構築の経験が、ゼロから行うPDM構築において生きているといえます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.