製造業の“みんなのスパコン”TSUBAMEのCAE利用の取り組みを聞く:スパコンとCAE(1/3 ページ)
東工大は「みんなのスパコン」と銘打ち、スパコン「TSUBAME」の学外利用を積極的に推進してきた。企業の使いやすさを模索してきた東工大の取り組みや、スパコンが注目されている背景などについて紹介する。
モノづくりの現場で解析を行う際に、外部の公共スパコンを利用する例が増えつつある。理化学研究所の「京」や計算科学振興財団の「FOCUSスパコン」が代表的だが、一部の大学も計算資源を産業界に向けて提供している。その中で東京工業大学は「TSUBAME 2.5」の2割強を産業界に提供している(2014年度)。
性能向上で「やりたかった計算」が可能に
最近CAEを実行するリソースとしてスパコンが注目されている理由について、「以前から取り組みたいと考えられてきたテーマが、スパコンを使うことで制限なしにできるようになってきたことが挙げられます」と東京工業大学 学術国際情報センター 共同利用推進室 特任准教授で同大学のスパコン「TSUBAME」の外部利用を担当する佐々木淳氏はいう。
今まではコンピュータの計算能力に限りがあったため、モデルの簡略化を行うのが当たり前だった。またシステム全体を解析したくても部品単体で解析するしかないといった制約もあった。しかし制限さえなければ、簡略化したりせず、統合的かつフルスケールのモデルで解くのが最も理想的だ。「今、それらのニーズとコンピュータの計算性能とが釣り合って、ちょうど注目されているのでしょう」(佐々木氏)。
もう1つの理由として、自社でハードをそろえるよりクラウドを利用する方がコスト面で有利になっていることが挙げられる。スパコンレベルのHPC(High Performance Computing)環境を自社で持つと、一定以上(リプレイスサイクルを超えて)利用しなければ投資回収できず、加えて運用費、電気代なども必要になる。そのため外部の基盤センターやクラウドを利用する方がコストを抑えられるようになってきているのだ。
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