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走行抵抗を正規に測らなかったスズキ、「燃費を良く見せる意図はなかった」エコカー技術(1/2 ページ)

スズキは、燃費試験に必要な走行抵抗値の測定について、同省が定める惰行法ではない方法による測定値を申告していた。国内で販売中の16車種全てについて、2010年から独自手法で算出した走行抵抗値として申請。惰行法と2010年以降の測定手法を比較した結果、走行抵抗値の差は誤差の範囲内のため、燃費値の修正は必要ないとしている。

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 スズキは2016年5月18日、国土交通省で会見を開き、燃費試験に必要な走行抵抗値の測定について、同省が定める惰行法ではない方法による測定値を申告していたことを発表した。部品単位の抵抗を測定して合算した数値を車両全体の転がり抵抗値と見なし、空気抵抗は風洞試験装置で測定、この和を走行抵抗値としていた。国内で販売中の16車種全てについて、2010年からこれらを走行抵抗値として申請した。惰行法と2010年以降の測定手法を比較した結果、走行抵抗値の差は誤差の範囲内のため、燃費値の修正は必要ないとしている。

写真左からスズキの本田治氏、鈴木修氏、同社 社長の鈴木俊宏氏
写真左からスズキの本田治氏、鈴木修氏、同社 社長の鈴木俊宏氏

スズキと三菱自の違いは、燃費を良く見せようとしたかどうか

 燃費試験に必要な走行抵抗値の測定に関連して、スズキと三菱自動車が相次いで会見を開く格好となった。両社の共通点は走行抵抗値を惰行法で測定しなかったという点のみといえる。

 三菱自動車は、軽自動車4車種の燃費を良く見せるため、実測値に近いが測定していない走行抵抗値や、燃費目標に見合うよう机上の計算で算出しただけの値を国に届け出ていた。実際に、三菱自動車が正規の手法で実施した燃費測定試験では、該当車種のJC08モード燃費と現在のカタログ値は10〜15%の乖離があった。

 一方、スズキは燃費を良く見せる意図はなかったと説明する。同社独自の測定手法による走行抵抗値が、惰行法による走行抵抗値で実測した測定値の誤差の範囲内に収まっていたのがその根拠となっている。そのため、燃費の測定値に影響はなく、排気ガスも保安基準に適合する範囲だとしている。実際に同社独自の測定手法と惰行法の走行抵抗値で燃費を比較すると、差は5%以下だったという。

 スズキ 会長の鈴木修氏は「スズキユーザーのお客さまに迷惑はかからないし、安心して乗っていただける。販売店にも燃費に自信を持って売ってもらうようお願いする」と述べ、同社 副社長で技術統括の本田治氏も「スズキのクルマの燃費が、実際に買って乗っている人からもよく評価されていることは事実」と胸を張った。生産や販売は一切停止しない考えだ。

 また、インドや欧州など海外市場向けのモデルは、現地の法令に沿って実施しているという。

風の強さが規定されている惰行法と、風の強いテストコース

 スズキが国の定める惰行法で測定した走行抵抗値を申請しなかった原因は、同社の相良テストコース(静岡県牧之原市)の立地にある。海に近く、強風が吹きやすいなど天候の影響を受けやすい環境だった。また、惰行法では、風の強さについて直進方向に毎秒5m以下、その垂直方向に毎秒2m以下と定義されている。

 このため、相良テストコースでは、限られた開発期間にもかかわらず追加の測定作業が必要になったり、測定する走行抵抗値のばらつきが大きくなることが開発現場の悩みのタネとなっていた。「不安定な作業を効率化し、的確なデータを得たいという動機があった」(本田氏)。

 開発現場にとって、走行抵抗値は燃費を左右する数値であるようだ。本田氏は「われわれは2010年以前、燃費向上のためにエンジンの改善などに力を入れていたが、(燃費改善のアプローチとして)走行抵抗値に焦点を当てた論文をよく見かけるようになった。研究開発の面でも正確な走行抵抗値を測定したいと考え始めた」と述べた。

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