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AUTOSAR導入に対する「期待」を正しく見定め続けるためにAUTOSAR〜はじめの一歩、そしてその未来(6)(2/3 ページ)

「量産開発を通じてのAUTOSAR導入」は2つの部分に分けることができる。前回紹介した「量産開発プロジェクトを完了させる」に続き、今回は「AUTOSAR導入により、基本的な型や支援体制をどのように変えていくかの見極めと必要な活動の実施」について説明する。

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AUTOSARへの「期待」を見定めるには

 これまでの連載で、AUTOSARによって標準化される対象の概要について述べてきた。それらを理解し、必要に応じてさらに深く知ることで、期待できることもより多く見えてくるだろう。しかし、それはAUTOSARそのものが提供するものに偏りがちで、自らの運用により得られるものは見えにくいだろう。

 AUTOSARを利用/運用することで得られるものを把握することは重要である。その際、AUTOSARの背後に潜む、以下のようにさまざまな側面も大きなヒントになりうる(注:決して網羅的ではない)。

  • 標準規格類の利用(AUTOSAR流の各種レベルでの抽象化やデータ形式、ワークフローの利用、アーキテクチャ、ECU間通信仕様など)
  • より多くの外部調達品の利用
  • 汎用品の利用
  • 自動コード生成の利用
  • リアルタイムOS(Real Time Operating System、RTOS)の利用
  • 再利用や各種自動化により得られる効果への大きな依存(言い換えれば、「投資をしてでも効果に賭ける」)

 まず、ここに書き出したキーワードの中に、期待につながるものはないかと、自身でご一考いただきたい。自ら見いだしたものの方が一般解よりも実感を持てるはずだ※4)

 また、「困りごと」の解決につながるものは比較的分かりやすいだろうが、長年にわたり対処や解決を諦めていたものは、「困りごと」としてすぐには思いつかないこともあるだろう。リスクアセスメントと同様に、見えやすいものだけに注目するべきではない。

 期待につながるものがもたらす効果の内容(トレードオフも含む)、得られる時期(どのくらい待たなければならないか)、投資や準備の要否、外部要因への依存性なども、やはり、受け入れる側の状況次第である。導入の効果は、AUTOSARそのものの特性ではなく、AUTOSARをあてはめる現場との組み合わせによる特性といえよう。

注釈

※4)考えた内容を持ち寄り意見交換することも役立つが、その際には「分析」の場であり「評価/判断」の場ではないことはお忘れなく(批判禁止)。しかし、議論禁止では決してない。議論を持ちかけることを批判と見なして拒否するのは、ISO 26262-2:2011の安全文化(safety culture、5.4.2およびAnnex B)の要求の観点からも大いに疑問がある。また、ただ単に集まるだけでは「社会的手抜き」に陥ることもあるのでご注意を。JIS Q31010: 2012 リスクマネジメント−リスクアセスメント技法における、ブレーンストーミングの長所および短所も参考になるだろう(B.1.6)。


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