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流体解析の安定性とクーラン条件無償ソフトで流体解析(5)(1/2 ページ)

無償で使える流体解析ソフト「Flowsquare」を使ってみよう! 今回は流体解析の安定性とクーラン条件について説明し、自動車周りの流れを計算してみる。

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 この連載では無償の流体シミュレーションソフト「Flowsquare」を用いて、流体現象についての説明と、流体解析ソフトに共通する考え方を説明しています。前回は境界条件の設定方法と翼周りの流れの解析例を紹介しました。今回は、数値解析の安定性を左右する「クーラン条件」について説明します。また解析事例として、自動車周りの流れを計算し、空気抵抗の発生する仕組みについて説明します。

流体解析の安定性とクーラン条件

 Flowsquareのみならず、流体シミュレーションには長時間を要します。そのため、大規模解析にはスーパーコンピュータが用いられ、気象の研究では「地球シミュレータ」が使われるように、スーパーコンピュータの進化を流体シミュレーションが後押ししている面があります。なぜ、流体シミュレーションには多大な計算能力が必要とされるのでしょうか? まず流体現象の非線形性を近似させるため、それから以下に説明する数値シミュレーションが安定して計算できる条件のためです。

 一般に、時間を追って計算する数値シミュレーションにおいて安定した計算を可能にするためには、「情報が伝搬する速さは、現象の伝搬する速さよりも大きくなければならない」というクーラン条件を満足する必要があります。分かりやすく言うと、情報が伝搬する速さは、計算格子の幅に相当するということです(1回の計算で情報が隣の格子に移るため)。一方、現象の伝搬する速さは、流体の計算では、流速に時間刻みをかけたものになります。すなわち、格子幅は、流速に時間刻みをかけた値よりも大きくなければなりません。これが、流体解析で計算が安定化するクーラン条件になります。

 クーラン条件を無次元化して表したものが以下の式(1)におけるクーラン数CLで、先ほどのクーラン条件はCL<1となります。

 Flowsquareでは、grid.txtの08:cflfacがクーラン数の逆数に相当します。推奨値が10以上ということはクーラン数では0.1以下ということになります。

 grid.txtの説明を見ると、時間刻みΔtは、

 市販のソフトにおいても、クーラン数を適切に設定する必要がある他、計算中はクーラン数をモニターする機能もあります。また、市販ソフトでは、陰解法による計算など、格子数の大きなモデルの解析でも、より少ない計算で安定して計算できるような工夫がなされています。

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