揺れるシャープ再建、ホンハイか産業革新機構か、決め手は「液晶以外」:製造マネジメントニュース(2/4 ページ)
シャープは2015年3月期(2015年度)第3四半期の決算と併せて経営再建に向けての取り組みの進捗状況を説明した。シャープが出資を受け入れる企業として、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と日本の産業革新機構の2社に絞ったことは認めたが「どちらかに優先交渉権を与えたという事実はない」(シャープ 代表取締役社長 高橋興三氏)とした。
鴻海精密工業とも産業革新機構が飲んだ3つの要望
シャープでは経営再建に当たり具体的な3つの要望を出したという。1つ目が「シャープのDNAを将来にも残す」(高橋氏)ということだ。具体的には、投資家などが要望しているように、カンパニーごとに切り売りするのではなく、各事業の複合体としての現在のシャープの形を維持するということである。
高橋氏は「シャープのカンパニーや事業体は大きく分けて2つの運営手法の事業が混在している」と述べる。「1つは大きな投資が必要となるデバイス事業の液晶事業である。もう1つが民生製品などを含むプロダクツ事業である。電子デバイス事業などもあるが当社の電子デバイス事業は最初からデバイスを作るわけではなくモジュールである場合がほとんどであるので枠組みとしてはプロダクツ事業であるといえる。この2つの大きな事業体は分けて考える必要があるが、プロダクツ事業についてはそれぞれの事業を持つことでの相乗効果もあり、それがシャープをシャープたらしめているともいえる」(高橋氏)。これを条件として要望し、鴻海精密工業と産業革新企業ともにこれらの要求を飲んだとしている。
2つ目が「従業員の雇用確保の最大化」(高橋氏)である。これには工場など生産地の雇用確保なども含むとしており、全体の人員数だけでなく拠点なども含めた形で受け入れることを要望したとしている。そして、この要望に対しても「2社ともに理解を示してくれた」(高橋氏)という。
3つ目は、主に鴻海精密工業に対する要望だが「技術の海外流出の抑止」である。これについても、既にシャープでは鴻海精密工業と「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」を2012年から共同経営しており「3年間共に活動を進めてきた中で、SDPが関わる大型液晶技術における海外への技術流出はなかった。そういう信頼関係はある。今後についても秘密は保持するということで理解を得られている」と高橋氏は述べている。
これらの3つの要望に2社から理解が得られる中「出資金額だけでなく事業運営の面でもさまざまな好条件を示してもらっており、これらの中でシャープが将来も社会に貢献できることは何かを考えた場合、どちらが良いかということをあらゆる条件を精査しながら、決めていく」と高橋氏は述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.