ISO26262のアセスメント担当者はスーパーマンでなければならない!?:ISO26262 アドヴィックス 事例(1/4 ページ)
アドヴィックス 機能安全監査室 室長の河野文昭氏が「第3回自動車機能安全カンファレンス」に登壇し、自動車向け機能安全規格であるISO 26262と向き合うための組織づくりについて講演。2009年からアドヴィックスで同氏が取り組んできた事例を基に、機能安全規格と向き合う組織戦略の立て方を紹介した。
アドヴィックス 機能安全監査室 室長の河野文昭氏が2015年12月15〜16日に東京都内で開催された「第3回自動車機能安全カンファレンス」に登壇し、自動車向け機能安全規格であるISO 26262と向き合うための組織づくりについて講演を行った。機能安全アセスメントを効率よく効果的に実施するには、プロジェクト単位ではなく組織全体で戦略を立てる必要があるという。2009年からアドヴィックスで同氏が取り組んできた事例を基に、機能安全規格と向き合う組織戦略の立て方を紹介した。
河野氏は、ISO 26262が正式発行される前の2009年から機能安全に関する業務に携わっている。ISO 26262への対応に向けて、機能安全規格に関する調査を行い、規格の内容を追い続けてきた。この結果、アドヴィックスの社内でアセスメント体制を確立し、アセスメントや監査、検査レビュー、確証レビューの各役割で適正な評価負荷の配分を実現させた。アセスメントを効果的に実施するため、「確認すべき基本軸」(同氏)の設定や効率を向上する設備の導入、人員育成にも取り組んできた。
機能安全規格を順守する方法
機能安全規格について河野氏は「安全設計の妥当性を明確に示す上で欠かせない」と説明する。「安全設計は、メーカーが意図しない不具合からユーザーを守る目的がある。万が一不具合が起きてしまった時には安全設計が妥当であることを第三者に説明するためにも、機能安全規格に準拠した開発が求められる」と述べた。
ISO 26262対応に取り組む上で課題となるのは、どうすれば規格を順守できるかだろう。河野氏は「規格の内容を正しく理解し、不明点をなくしていくということに尽きる。規格を順守しているか確認する作業がアセスメントだ」と説明する。
また、同氏は機能安全活動に関して積極的に社外から情報収集することを勧める。「規格への理解を深めてから、機能安全規格に準拠したプロセスを定義していく必要がある。定義したプロセスに沿って現実的な安全活動を実施するのが一番大変になるところ」(同氏)だという。
アドヴィックスでは、2009年に機能安全規格の調査を始めると同時に、社内に機能安全ワーキンググループを立ち上げた。「運用まで、情報収集と並行してプロセスの検討や試行に取り組んだ。システム開発のプロセス改善のガイドラインであるCMMI(Capability Maturity Model Integration,能力成熟度モデル統合)や、欧州自動車メーカーが車載ソフトウェアの品質改善のために策定したプロセスモデルであるAutomotive SPICEの活動もないがしろにはしていない。さらに現場のための支援ツールも同時に検討していた」と振り返る。
社内でプロセスや体制、ツールをそろえた後に、外部の複数の認証機関から評価を受けた。同社のアセスメント担当メンバーは外部の認証機関との会議に同席し、アセスメント実施に向けた実践教育を受けたという。こうした道のりを経て、社内のアセスメント体制を確立した。
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