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第4次産業革命、2030年に日本の製造業が“あるべき姿”とは?製造業IoT(2/4 ページ)

第4次産業革命にどう立ち向かうべきか。安倍政権における「ロボット新戦略」の核として取り組みを進める「ロボット革命イニシアティブ協議会」で、製造業のビジネス革新をテーマに取り組む「IoTによる製造ビジネス変革WG」が中間とりまとめを公表。日本の製造業の強みである「人」や「現場力」を生かしつつIoTなどを取り込む上での論点をまとめた。

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2030年に日本の製造業があるべき姿とは?

 先述した通り、IoTによる製造ビジネス変革WGでは「2030年における日本の製造業の在り方」を共有することを目的の1つとしている。中間まとめではまず前提として「日本の強みである『人』『技術力』『現場力』を維持・強化」という点は押さえつつ、抜本的に変革させていかなければならない5つのポイントで「あるべき姿」をまとめた。

1.IoTと日本の強みの融合/中堅・中小企業へのIT・IoTの浸透

 中間まとめでは、日本の製造業は2030年の将来においても“強み”である「人」「技術力」「現場力」「カイゼン力(スピードときめ細かさ)」「規律」を維持しているとし、これらを「IoTの活用と融合させつつ、世界でも類をみない水準において、引き続き、維持・強化していく」という点をあるべき姿と置く。

 特に、熟練技能の形式知化を行い、非熟練者が簡易に技能作業ができるように支援する(IoTによる技術の伝承)取り組みなどが実現できる。さらに、日本の製造業を支える製造業付加価値額として、約50%を占める中堅・中小企業にもIT・IoTが浸透していくことなどにより「大企業と中小企業の密な連携による競争力を発揮する」と中間まとめでは述べている。

 これらを背景に、大企業と中堅・中小企業の間の系列を越えた取引が増加することにより、中堅・中小企業の取引の幅が広がる他、IoTを通じて市場と直接つながることで、新たな市場を獲得する可能性なども指摘。ただ、中小企業へのIT、IoTの浸透は、「今後の課題である」(中間まとめ)と位置付ける。製品の設計開発からその生産プロセス、販売後の稼働管理、あるいはサプライチェーン間の取引形態やトレーサビリティの在り方など、モノづくりに関するさまざまなプロセスが変化する中で、サプライチェーンを構成する全ての現場でIT、IoTを活用した新たな生産システムに対応していくことが必要となる。

 また、IT化やIoT活用により人の役割の低下や「ロボットに人の仕事が奪われる」などの議論なども生まれているが、中間まとめでは「IoTの活用が進展した場合にも『人』の役割は、より高度な判断を要する業務へ移行・特化するなど、引き続き重要であり(必ずしも完全無人化といったことが目指されるわけではなく)、人と機械・設備・ロボットの新たな協調・共生の姿が模索・実現される」と述べている。

2.革新的な生産効率の向上と高品質化プロセスの維持(プロセス変革)

 IoTの活用は製造業にとって大きく分けると「社内」に向けたものと「社外」に向けたものがある。この「社内」での活用において大きな価値を発揮すると見られているのが、生産効率と品質の領域だ。

 生産ライン上の機械の稼働状況やワークの情報、エネルギー消費量がセンサーなどにより測定・統合(見える化)され、これら情報を分析・活用することで、稼働率や歩留まりが向上する。これまで熟練技能者の勘に頼っていた生産性向上が非熟練者であっても簡易に行うことができるようになり、技術が継承されていくことが可能となる。一方で、シミュレーション技術や3Dプリンタなどにより設計と生産の現場がシームレスにつながり、リードタイムの減少を生み、市場ニーズにより早く対応した製品を開発・生産できるようになる。

 また、生産ライン上の機械を相互に連携させることによって、例えば在庫管理の省人化や部品サプライのジャストインタイム化など、生産システム全体での最適化が可能となる。ただ、そのためには、異なる企業の製品やネットワークであってもデータ連携が可能な枠組みが必要だ。現在のところ、我が国では、異なるメーカーの機械のデータを接続し、連携させることが難しい状況にあるが、中間まとめでは「他社の機械やシステムとつながること自体が企業の競争力向上への手段となりうる時代が目前に迫っている。企業間連携を図り、共通プロトコルの開発や共通インタフェースへのAPI開発の活性化などを行っていくことが求められる」としている。

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