富士通がオープンイノベーションに取り組む理由(後編):zenmono通信(3/5 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は富士通で「あしたのコミュニティーラボ」などの活動に取り組んでいる柴崎辰彦さんにお話を伺った。
ハッカソンから生まれるビジネスとは?
柴崎氏 このハッカソンなんですが、われわれが企画しているだけではなくて、富士通の中のハッカソン選手を外に派兵しております。この「Green Hackathon」というのは北欧のある大学がきっかけで始まったハッカソン。環境問題に関するハッカソンですけど、ここに富士通の社員が何人か参加して、めでたく1位になったチームにも富士通のメンバーが入っていたと聞いております。
このハッカソンというのが非常に楽しくにぎやかにやるイベントということで、好きなことをやりたい人間が集まってやっているイベントじゃないかという見方もあるんですけど、そうではなくてビジネスの世界でもハッカソンを組み入れた商談が出てきています。
いわゆるベンダーを選定する上で、ハッカソンを前提にしたようなものも出てきています。今画面に出ておりますのが、福島県の浪江町。震災の影響で町民の方々が被災・離散して暮らしています。こういった町民の方々の「絆(きずな)」を再生するような仕組みをICTでできないかと考えました。「コード・フォー・ジャパン」というITを使って地域の課題を解決するような団体があって、ここから分派された「コード・フォー・浪江」という団体と町役場の方が企画をされて、タブレット端末を使ってふるさとの絆を再生しようと。
なんとこのアイデアソン・ハッカソンは10回もやっています。ここには町民の方、役場の方、それから富士通のようなベンダー、ベンダーも富士通以外に4〜5社参加しています。全部で375人の方が参加して、アイデアが770件出てきました。そのアイデアは10回におよぶハッカソンでできたものです。
その中からより具体的なプロトタイプが14個くらい出てきて、これをベースに各ベンダーがプレゼンテーションをしました。その模様はYouTubeにあがっています。町民の方や役場の方が、どこのベンダーでこのサービスを開発したいかを選ぶという形です。運良く私ども富士通のチームがこの商談、アプリの開発ベンダーとして信任をいただきまして、実際にこのタブレットのサービスの提供を開始しています。
enmono 商談の中にハッカソンが組みこまれているんですね。
柴崎氏 そうなんですね。ICTのサービスを提供するだけではなくて、モノづくりだとかいろんなシチュエーションでこれからアイデアソンやハッカソンを条件にしてベンダーを決められるようなケースも出てくるかなと思います。
enmono 発注先がもうそういう風に変わってきているんですか?
柴崎氏 そうですね、やっぱり通常のサービスではない、どんなサービスを提供したらいいかわからない。先程の四象限の図の中では右上のサービスだと思います。IoTの世界だと思いますけど、これまで提供されたことがないようなサービスを提供するにはどんなことをやったらいいのか。サービスを利用する町民の方も「どんなサービスがいい」というのは口で表現できないんです。アイデアソンとかハッカソンの活動を通して、暗黙知となっているような必要とされるサービスを炙りだす、そういう活動です。
開発にあたってはウォーターフォール型の開発ではなくて、ITの世界でいうアジャイル開発によって繰り返し繰り返しプロトタイプを作って、町民のお爺ちゃんお婆ちゃんにも使っていただきました。そうして完成したサービスが提供されています。
enmono 商品企画から関わっているんですね。
柴崎氏 やっぱりたくさんの多様な方々が参加しているんです。「七人の侍」のところでお話ししましたけど、町民の方々に本当に役に立つサービスはなんなんだろう、どういうサービスを提供したらみんなが喜んでくれるのか、そういう想いで役場の方、町民の方、ベンダーの方も一致団結して実現したハッカソンだからこそ、こういうサービスができたのかなと思います。
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