検索
特集

「とにかく前倒しでCAEやったら何とかなるんちゃうの?」――本当のフロントローディングとはCAEイベントリポート(2/4 ページ)

MONOist主催「CAE カレッジ フロントローディングを実現するための設計者CAEとクラウドの活用」で、オムロン 岡田浩氏は同社における設計者CAEとフロントローディングの考え方や、人材育成体制について語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena

フロントローディングのためのCAEに必要なこと

 岡田氏は設計・生産現場からのCAEに対する期待として以下の3つを挙げた。

  • 従来以上に厳しい制約条件の中で、商品の機能を成立させたい:論理的・実践的なアプローチ手法としての道具
  • モノづくりの経験不足を補いたい。(試作の代わりとなる体験)、またはベースとなる基礎工学を勉強したい:ノウハウの伝承・教師としての道具
  • 強度計算などの作業効率を向上したい:作業効率向上のための道具

 これらが土台となり「フロントローディング型商品開発」「低コスト生産」が実践できるとした。

 CAEを活用するためには、以下のスキル・整備が必要だと岡田氏は言う。

  • 設計・生産技術開発に対するCAE活用ノウハウ構築
  • CAE特有のK/H(計算力学):メッシュや非線形解析の知識
  • CAE利用環境の整備:ソフトの操作性、サーバなど

 「一番大事なのは、『ここだけは設計者自身が責任を持たないといけない』という部分」と岡田氏は述べる。「ノウハウ構築にあたっては、まず商品の機能検証と制約条件とのすり合わせが必要。『何が課題で、それをどうしたらいいか』という仮説検証型アプローチの仕方が一番重要となる。それができて初めてCAEでの検証が可能だ。またこれはOJTではないとなかなか伝わらない」。

 仮説検証型アプローチとは、例えば設計者自身が部品の不良を見て、

「この辺りにコーナーがあるから応力集中して亀裂が入ったのだろう」

「製品を使用している環境に部品が腐食しやすい環境があったのでは」

「ここにウェルドラインがあるので、構造解析より先に樹脂流動解析からやろう」

 という風に仮説を立てながら改善案など検証することである。


成形部材の割れの仮説検証例(出典:オムロン)

 仮説検証型アプローチを行うに当たっては設計者自身に機械工学や材料力学、熱、流体工学などの知識が必要である。「オムロンは電機メーカーなのでメカ設計者の数が少ない。(社内の設計者たちは)一応大学ではメカ設計を勉強してきたものの、業務では電気を主体に取り組んでいるので、メカ設計の観点が抜けがちになってしまう」(岡田氏)。

 またCAE特有の知識は設計者にとって難解な部分もあるが、「行列式やマトリクスなりを覚えるところまではいかなくとも、CAEを使う上での最低限の計算力学の知識の習得が大事」と岡田氏は述べた。ただし本質はCAEのテクニックでも利用環境でもなく、あくまで設計者が本当にやりたいことや設計課題を明確にする、仮説検証型のアプローチであるとした。

 「フロントローディングとは『とにかく前倒しでCAEやったら何とかなるんちゃうの』ということではない。設計者自身が前倒しで自分自身の経験や機械工学などの知識でどれだけ仮説を立てられるかどうかということ。それが本当のフロントローディングであって、それを支援するのがCAEである」(岡田氏)。

 CAEをうまく活用することで、技術者自身の仮説・検証能力が向上し、それがコスト削減、製品の品質向上、開発期間の短縮につながると岡田氏は述べた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る