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イノベーターに求められる2つの力とは“これからのエンジニア”の働き方(2)(2/2 ページ)

第1回ではなぜ日本人がイノベーションを起こせないのかについて私の考えを紹介しました。ずっと身についてきた国民性をすぐに変えることなど不可能。であれば、その特性をよく理解して、意識的に打破すればいいのです。第2回となる今回では、イノベーターに「必要な力」についてご説明したいと思います。

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いくらいいものでもその良さを伝えられないと意味がない

 もう1つ、論理的思考力が必要な理由は、「分かりやすく伝えること」です。これは理解していただきやすいのではないでしょうか。いくら優れたアイデアであっても、それが個に属したままでは組織でのイノベーションは起こせません。

 日本人は「空気を読む」「行間を読む」ことに長けているというのは第1回でお伝えした通りです。ビジネスにおいても、“はっきりとは書かないけど、伝わるよね”というスタンスのメールを私もよく受け取ります。しかし、それでは伝わるものも伝わりません。6W3H、事実的根拠とともに相手が分かりやすい形で文章なり図解なりを構成する力が必要不可欠です。

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 「良いもの」を相手にしっかりと分かりやすく伝えきり、理解・納得させること。それが日本的な“画期的な意見にもなかなかGOを出せないリーダー”たちの背中も押すのです。

あなたの「論理的」は本当に「論理的」ですか?

 モノづくりエンジニアであれば、「論理的思考力は既に身についています」という方も多いかと思います。確かにモノづくりにおいて論理的思考力というのは切っても切れない関係にあるもので、あって“当然”なのかもしれません。しかしその「論理」は「あなたの世界だけの論理」になっていませんか?

 そこで重要なのがもう1つの力である「コミュニケーション力」です。イノベーターには、「人」と「組織」をつなげる力が必要なのです。

 匠として自分の技術をひたすら磨く。目の前の製品の品質や作業効率をぐんぐんと上げる。そのために論理的に考え、出された結論は目の前の技術を向上させるのみで、「イノベーション」にはつながりません。

 自分の1つ上の工程、自分の1つ下の工程に当然のように首をつっこみ、人脈を広げ、コミュニケーションをとりまくる。そうやってさまざまな場所から情報を得て組織全体を俯瞰して見たときに初めて気付く問題や解決策が必ずあります。コミュニケーション力はただ「人と話す」ことを指すのではなく、「人」と「組織」と有機的につながり、視野を広げることを指します。そしてときには、自分自身だけでなく、他人と他人、組織と組織同士をつなげるのです。

 私はよく「イノベーターは人気者であれ」と言います。

 コミュニケーション力が高い人は総じて人気者であることが多いと思います。多くの場所で受け入れられ、気軽に声をかけてもらえるか。何か新しいことをしたときに、仲間がついてきてくれるか。上司が手を貸してくれるか。技術とは一見関係ないように思えることですが、イノベーターには欠かせないスキルです。田中角栄氏の言葉にもこうあります。

「人は理では動かず情で動く」。

 ロジカルなだけでは、人はついてきません。

 今回はイノベーターに必要な2つの力をご紹介しました。次回は、この力をどう伸ばすのかについてお話ししたいと思います。

筆者プロフィル

株式会社VSN VI開発部 桑山 和彦(くわやま かずひこ)

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通信機器、情報機器メーカーより株式会社VSNに転職。VSNに入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。

2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜擢。ビジネス・ブレークスルー大学・大学院の教授である斎藤顕一氏より問題解決手法の教示を受け、いくつもの問題解決事案に携わる。

現在はVIの将来的な発展を担う「VI開発部」の主要メンバーとして、新たなビジネスモデルの策定やVIブランドの構築、社員の育成などを行う。

株式会社VSN http://www.vsn.co.jp/

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