検索
連載

IoTの価値を高める地域医療連携システムの在り方医療機器開発者のための医療IT入門(4)(2/3 ページ)

医療機器開発者向けに、医療情報システムに代表される医療ITの歴史的背景や仕組みを概説する本連載。第4回は、地域医療のハブを担う地域医療連携システムを取り上げる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

相互運用性と標準化で後れを取った日本の地域医療連携システム

 日本の場合、2001年に政府のIT戦略本部が策定した「e-Japan戦略」および厚生労働省が策定した「医療のIT化のグランドデザイン」が、電子カルテおよびそれをベースとする地域医療連携システムの契機となった。

 図2は、グランドデザインで提言された、医療情報システム構築のための発展段階を示している(関連情報)。電子カルテ導入を中心とする第1段階(医療施設の情報化)」を踏まえ、地域医療連携システムに対しては、第2段階(医療施設のネットワーク化)の地域医療連携体制の確立、第3段階(医療情報の有効活用)の医療情報の整備・収集などで重要な役割を果たすことが期待された。

図2
図2 医療情報システム構築のための発展段階の設定 出典:厚生労働省「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン 最終提言」(2001年12月)

 その後、さまざまな支援策の下で電子カルテの導入が進んだ反面、地域医療連携システム導入の阻害要因となる課題が表面化してきた。

 例えば、カルテの電子保存の三原則(真正性・見読性・保存性)を保証する仕組みの整備が遅れ、データの継続性の保証に関する懸念が生じた。また、標準的な交換規約がないまま、個別に電子カルテシステムの構築が進んだ結果、診療情報の項目が微妙に異なり、データ形式やデータ長が違うなど、マルチベンダー環境における相互運用性の妨げとなる不具合が生じてきた。加えて、2005年に全面施行された個人情報保護法の下で、医療情報システムの安全管理の面に対する懸念も生じてきた。

 このような背景を受けて、経済産業省は2005〜2007年度の間、「医療情報システムにおける相互運用性の実証事業」を実施し、データの互換性、システムの相互接続性、システム共通基盤のセキュリティにおける検討を行った(関連情報、PDFファイル)。厚生労働省は、2005年度より「標準的電子カルテ推進ワーキンググループ」で標準化に関する検討を開始した。2007年12月、グループ名称を「保健医療情報標準化会議」(関連情報)」に変更して、厚生労働省において保健医療情報分野の標準規格として認めるべき規格(厚生労働省標準規格)の検討を行ってきた。

 保健医療情報標準化会議は、医療情報関連学会・産業団体が集まった「医療情報標準化推進協議会(HELICS協議会)」(関連情報)」などと連携しながら、2010年3月〜2012年3月の間、以下の12規格を厚生労働省標準規格として提言している。

  • HS001:医薬品 HOT コードマスター
  • HS005:ICD10 対応標準病名マスター
  • HS007:患者診療情報提供書及び電子診療データ提供書(患者への情報提供)
  • HS008:診療情報提供書(電子紹介状)
  • HS009:IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)統合プロファイル「可搬型医用画像」およびその運用指針
  • HS010:保健医療情報-医療波形フォーマット−第92001部:符号化規則
  • HS011:医療におけるデジタル画像と通信(DICOM)
  • HS012:JAHIS 臨床検査データ交換規約
  • HS013:標準歯科病名マスター
  • HS014:臨床検査マスター
  • HS016:JAHIS 放射線データ交換規約
  • HS017 HIS、RIS、PACS、モダリティ間予約、会計、照射録情報連携 指針(JJ1017 指針)

 なお、HELICS協議会は2015年7月、地域医療連携情報システムを構築する際に、参加施設の情報システム間で、患者(個人)の識別情報や医療情報を共有するのに必要な情報連携基盤の仕様を定めた「地域医療連携における情報連携基盤技術仕様V2.0」を採択したが、厚生労働省標準規格として提言するレベルまでには至っていない(関連情報)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る