「グローバル最適地生産」実現に不可欠な“標準化”と“共通言語”:生産管理の世界共通言語「APICS」とは(1)(2/5 ページ)
生産の「グローバル化」が叫ばれてから久しいが、工場進出はできても多くの企業が成果を出すのに苦労している。苦労の要因の1つにコミュニケーションの問題があるが、実は、工場を運営しサプライチェーンを管理する“世界共通言語”が存在する。「APICS」だ。本稿ではAPICSとは何か、またどう活用できるのかということを専門家が解説していく。
サプライチェーンにおける標準化とAPICSという団体
さて、米国にAPICSという団体がある。1957年にAmerican Production and Inventory Control Societyとして設立され、全世界100カ国以上で292のチャネルパートナーを持つ。SCM(サプライチェーンマネジメント)教育と資格認定を専門とする団体としては世界最大の団体である。本拠地は米国イリノイ州シカゴにあり、全世界に1万5000社以上、約4万1000人の会員で構成されている。
現在はSCMに関する2つのSCMプロフェッショナルの国際資格認定と知識フレームの標準化を推進している。1973年からスタートしたCPIM(Certified Production and Inventory Management)資格は全世界で10万人以上の資格保持者があり、比較的最近できたCSCP(Certified Supply Chain Professionals)資格の方でも1万5千人の有資格者がいるという団体である。
APICSの基本理念と活動
APICSも多くの非営利団体と同じく社会貢献をその理念として掲げているが、その実現手段と目標を明確に定義している。日本の多くの団体のように曖昧な目的になっていないところが、いかにも米国団体らしい。
APICSの基本理念は「標準となる基本的知識の習得と共有化を通して個人の業務能力を向上させ、それによって生産性の向上や企業利益の増大を可能とし、それらを基盤とする社会の発展、国家の繁栄を通して個人生活の向上と幸福を実現する」というものである。そしてそのために、個人の能力や知識レベルを保証する資格認証試験の実施と、それに必要な、時代に合った知識体系や用語の標準化の推進と教育を行うことを会の業務とするとしている。
APICSが認定する資格は、以前からの資格が2種類ある他、後述するようにサプライチェーンカウンシル(Supply Chain Council、以下SCC)との統合によって増えたものがある。以前からの資格は下記の2つである。これらについては、次回以降の連載で詳しく紹介する。
- CPIM (Certified in Production and Inventory Management):生産管理や在庫管理におけるプロフェッショナルな能力の基準として、世界的に認知され、1973年以来10万人以上が同資格の認定を受けている。
- CSCP (Certified Supply Chain Professional):サプライチェーンの専門資格。このプログラムは広範囲に及ぶサプライチェーンをマスターできるように作られており、サプライチェーン・マネジメント、戦略、設計、コンプライアンス、導入、オペレーションに関する主要な概念を学ぶことができる。さらに、プロセスの合理化や効率の改善について、学習したことを実際の組織へ適用する方法も学べる。同資格はこれらの専門知識を保有していることを認定する資格である。
それぞれの資格に関して、資格所有者は教育訓練者向けのセミナーを受講することによってインストラクターの資格が得られる。
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