あらゆるモノが外部記録メディアになる「MoT」の世界
慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏のインタビュー記事をご覧いただけましたでしょうか?
田中氏は「これまでの“モノ”のイメージから抜け出さない限り、いずれ3Dプリンタに限界が訪れる」と、今後の3Dプリンタの発展の方向性に警鐘を鳴らします。
もちろん、製造業というくくりの中で、3Dプリンタが従来の製造工法を補完するような存在として発展を続け、利活用が広がっていくことを否定しているのではありません。田中氏は、“社会全体をより豊かにするためのツール”として、3Dプリンタや3Dデータを捉えています。
単に3Dデータを“物質化”するだけでは、3Dプリンタは製造方式の置き換えにしかなりません。「『モノ』に対する認識を根本的に変える必要がある」(田中氏)というのです。
そうした考えから生まれた成果の1つが「IoTファブリケータ」という装置です。この装置は、3Dプリンタだけでなく、複数の工作機械の要素を取り込んだ“複合機”なのだそうです。IoTファブリケータを使うと、例えば、造形途中に情報が書き込まれたRFIDチップを埋め込んで、造形物を“単なる物質=従来のモノ”ではなく、“情報を持ったモノと呼べないモノ”を作り出すことができます。
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作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。 - 「3Dプリンタは流行ではなく革命」――米教授が示す10の原則と3つの未来
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