検索
連載

ZFとTRWの統合が生み出すメガサプライヤとしての真価クローズアップ・メガサプライヤ(1/6 ページ)

創業100周年を迎えるZFは、TRWの買収によって、ボッシュ、コンチネンタル、デンソーと肩を並べるメガサプライヤとなった。駆動力伝達系と足周りを得意とするZF、操舵システムとシャシー制御を得意とするTRWの統合によってどのような価値を生み出せるのか。自動車ジャーナリストの川端由美氏によるリポートをお届けする。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 1915年に創業したZF Friedrichshafen(以下、ZF)にとって、今年(2015年)は特別な年だ。100周年を迎えたことに加えて、2014年9月に発表したTRW Automotive(以下、TRW)の買収を2015年5月までに完了し、世界第2位の自動車部品サプライヤとして新たなスタートを切ったからだ。自動車業界から見れば、Robert Bosch(ボッシュ)、Continental(コンチネンタル)、デンソーと肩を並べるメガサプライヤが誕生したことになる。

 ZFというサプライヤについて、座学を少々。社名に掲げられた「ZF」とは、Zahnradfabrik Friedrichshafenの略で、ドイツ語で「フリードリヒスハーフェンの歯車製造所」という意味だ。その名の通り、創業当時は航空機用のギヤを製造しており、現在ではダンパーで有名なSachs(ザックス)を傘下に収め、トランスミッション、駆動系、サスペンションの各分野におけるグローバルサプライヤの地位を確保している。

ZFの事業領域とブランド
ZFの事業領域とブランド(クリックで拡大) 出典:ZF

 一方のTRWは、1904年創業のグローバルサプライヤである。米国ミシガン州に本拠を置き、T型フォード向けの自動車部品製造からスタートしたが、現在は米国だけではなく欧州でも大きなシェアを誇る。

TRW買収後の新生ZFの企業規模(左)と製品ポートフォリオ(右)。両社の2014年の売上高を単純合算すると314億ユーロ、従業員数は13万4000人になる。説明スライドの中では、青色がZF、薄茶色がTRWを示している(クリックで拡大) 出典:ZF

 ZFによるTRWの買収額は135億米ドルと多額だが、この買収によってZFの売上高は約300億ユーロに達する。世界でも指折りのメガサプライヤとなると同時に、技術面から見ても、駆動力伝達系と足周りを得意とするZFに、操舵システムとシャシー制御を得意とするTRWが加わることによって、自動運転システムの開発まで可能になった。まさに、名実ともにメガサプライヤの仲間入りを果たすことになる。

 買収の発表から約1年、新生ZFがメディア向けにワークショップを開催した。ドイツのサプライヤにとって、「IAA(フランクフルトショー)」が開催される年には「プレIAA」なる先行発表をするのが常だが、今年(2015年)は前述の通り、ZFにとっては100周年を記念した大掛かりなものとなった。ドイツのポツダム郊外にあるテストコースに到着すると、2015年9月に開催されるフランクフルトショーで公開される予定の新技術を搭載したテスト車がずらりと並んでいた。

新生ZFが開催したメディア向けワークショップの様子
新生ZFが開催したメディア向けワークショップの様子。新技術を搭載した数多くのテスト車を用意していた(クリックで拡大) 出典:ZF

 都市型モビリティのコンセプト、駆動系技術と軽量化を中心にした高効率化技術、高度ドライバー支援と衝突安全を含む安全技術、そして自動運転という4つの技術群に分かれてワークショップが開催され、それぞれの技術について実際に運転したり、同乗走行したりすることで体験できた。本稿では、それらの中で主だったものを紹介する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る