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はじめてのAUTOSAR導入で陥りやすい罠AUTOSAR〜はじめの一歩、そしてその未来(3)(3/3 ページ)

国内企業でAUTOSARを初めて導入する際の典型的パターンは2つある。「AUTOSAR導入準備の初期段階としての試作評価実施」と「量産開発を通じてのAUTOSAR導入」だ。今回は、これら2つのパターンの詳細と、それぞれどういった結末が起こり得るかについての考察を示す。

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真のAUTOSAR導入に向けた第一歩とは

 連載の第1回では、「現在最新のR4.2 Rev.1に続いて、間もなくRev.2が発行される予定」と述べた。そのR4.2 Rev.2は、2015年7月31日付で発行された。第1回の冒頭でも述べたが、変化は情報の寿命を大きく左右する。そして、大きな変化による影響を正しく見積もることは案外難しい。特に、小さな変化ばかりが続き、大きな変化がしばらくなかった場合には、過剰に不安視されたり、逆に楽観視/過小評価され過ぎたりすることもある。

 現在のAUTOSARの運用では、極端な楽観視と不安視とが複雑に入り混じっているようにも見える。そして、当然ながらその様子は企業ごとに異なるのだが、各社の開発現場レベルとマネジメントレベルで大きく食い違っていることも珍しくはない(空間軸:水平および垂直の両方向での相違)。また、同じ方から全く異なる答えを半年後にいただくことも少なくない(時間軸での相違)。

 少なくとも、「AUTOSARとは?」という問いの1つである、「AUTOSARをどのように運用するか、そしてそこから何を得るのか?」という点だけをとっても、おそらく、明快で永久不変かつ万能な唯一の答えは出てこないであろう。そう考えると、空間的/時間的に分布を持つ集合として観察する方がふさわしいと考えることもできる。少なくとも、私自身は自動車メーカーやECUサプライヤ、そして製品を販売するだけの立場とは異なる位置から日々観察させていただいているが、「明快であったり、永久不変であったり、万能な、あるいは、唯一の答えは滅多にない」という確信が深まっており、また、それが求められる場面があまりにも多いとも感じている。

 読者の皆さまにとっては観察よりも目の前の課題にいかに対応するかが重要であろう。そうであれば「ここでは考えざるをえない」ということを受け入れることが、真のAUTOSAR導入(あるいは、その障壁の除去)の第一歩なのかもしれない。そう考え、今回はできるだけ「考えていただく」ということのためのヒントを示すのみにとどめるようにした。あえてはっきり書いていないので、もしも直接の議論をご希望であれば、「よろず相談会」の窓口を通すなどして、私までご連絡いただきたい。



 次回からは、これらの典型的なパターンに対する私見を述べていく。私の考える理想的な導入計画についても、少しずつご紹介していきたい。

お知らせ

 筆者が現在所属するイータスでは、AUTOSARをはじめ車載ソフトウェア開発に関する「よろず相談会」を随時開催しています(要事前予約、初回無料)。詳しくは、申し込み用Webサイトまで。


【筆者紹介】
櫻井 剛(さくらい・つよし) イータス株式会社 RTAソリューション シニア・コンサルタント
2014年よりイータス株式会社。ECU開発(1998年〜)やAUTOSAR導入支援(2006年〜)における経験を生かしし、2015年現在、AUTOSARに関する全般的な支援業務、および、機能安全を含むシステム安全に関する研究に従事。修士(工学)およびシステム安全修士(専門職)。
イータス株式会社
http://www.etas.com/ja/


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