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自動運転実用化に向けた政府レベルの取り組みは米国がリードAutomated Vehicleシンポジウム2015リポート(後編)(3/4 ページ)

自動運転技術のシンポジウム「Automated Vehicleシンポジウム2015」では、自動運転の実用化になくてはならない法整備を担当する各国政府も講演を行った。同シンポジウムリポートの後編では、自動運転のルール作りを主導する米国を中心に各国政府の取り組みを紹介する。

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主要な州で本格的な実証へ

 Mcityの開設を受けて、ミシガン州では2017年のV2VおよびV2Iの量産化に向けた実証試験を本格化する。

 先述したSafety Pilotに参加した3000台の実験車両を含めて、DSRCの実験機を装着した車両は合計9000台に達しており、DSRCがカバーする地域は43km2ある。2015年に入ってからは、州政府関連の車両や大型トラックなどを含めて、合計2万台にDSRCの実験機を装着する。そして2016年からは、V2Vの専用実験車両2000台を公道で走行させる。これらに加えて、ドライバーが乗車しない完全自動運転車やシェアライドに関する具体的な実証試験を実施するという。

ミシガン州はアナーバー市周辺でV2VとV2Iの公道実験を拡大する
ミシガン州はアナーバー市周辺でV2VとV2Iの公道実験を拡大する(クリックで拡大)

 今回のシンポジウムでは、ミシガン州の他に、カリフォルニア州とフロリダ州の交通局が自動運転の実証試験について講演した。

 カリフォルニア州は、2014年5月に、公道における自動運転の実証試験の法整備が完了し、同年9月16日から同法規を発効した。実証試験を実施する場合、賠償金額500万米ドル(約6億1500万円)の対人対物保険の加入を義務付けた。また“ドライバーレス”での公道走行は禁止し、テストドライバーが運転席に必ず座らなければならない。このテストドライバーとは、自動運転に関するトレーニングプログラムを受けた者であり、実証試験の実施企業の正社員または契約社員などであることが必要だ。交通事故が発生した場合、事故発生から10日以内にカリフォルニア州の道路交通局に事故報告書を提出しなければならない。そして、公道での自動運転の実証試験の許可証の有効期限は1年間として、毎年更新の手続きが必要だという。

 現在、同許可証を有するのは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループ、Daimler(ダイムラー)のメルセデス・ベンツブランド、日産自動車、Google、Tesla Motors(テスラ)、ボッシュ、デルファイ、そして2013年10月に自動運転車に特化して創業したベンチャー企業・CRUISEの合計8社である。

カリフォルニア州で自動運転の実証試験の許可を得ている企業
カリフォルニア州で自動運転の実証試験の許可を得ている企業(クリックで拡大)

 フロリダ州は、2015年末までに道路インフラを含めた自動運転に関する戦略書をまとめる方針だ。2016年には、V2Vを含めたCVに関する法整備を進める。実証試験の舞台としては、オーランド市内のフリーウェイ、トールウェイ(有料道路)、そして一般公道をルートに設定した。そして2015年12月に、自動運転とCVに関するカンファレンスをジャクソンビル市で開催するとした。

 これらの他、自動運転に対して積極的な州は、ネバダ、ペンシルバニア、そしてカナダのブリティッシュコロンビアがある。

 本来、自動運転の法整備は1国の国内で同時に進められるべきものだ。だが、米国の場合、交通行政に関しては、州政府、カウンティ(郡)、そして市の独立性があり、連邦政府による法整備の一元化が難しい。実際、自動車免許の所得可能年齢やフリーウェイの最高速度など、米国は地域によって大きな違いがある。

 自動運転については、米国国内で自動車販売台数が最も多く、さらにIT系産業が集積するカリフォルニア州、そして自動車産業が集積するミシガン州が主体となり、そこにワシントンDCの連邦政府が連携し、全米に向けた法整備を進めていくことになるだろう。

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