出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(前編)、あれは本当に“惨敗”だったのか?:“ロボット大国日本”は負けたのか(3/4 ページ)
災害対応ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge」で日本からの参加チームは最高10位と、振るわない結果に終わったが、あれは本当に"惨敗"だったのか?参加した産総研チームに決勝の裏側を聞いた。
なぜDRCに参加したのか
――産総研というと日本を代表するロボット研究開発拠点の1つですが、それが海外で、しかもDARPAが主催するロボット競技会に出場すると聞いて驚きました。DRCに参加した目的は何だったのでしょうか。
金広氏: 産総研ではもう10年以上ヒューマノイドの研究を続けていますが、東日本大震災が起きる前は、女性型のロボットを作っていろんなイベントに出展したり、どちらかというとエンターテイメント向けの応用が考えられていました。しかし震災後、危険な災害現場で活動できるロボットが求められるようになり、産総研でも現在、研究を行っているところです。
そうしたタイミングで、DRCという災害対応ロボットの競技会が開催されることになりました。競技会に参加すると、様々な効果が期待できます。1つは競技会という明確な目標ができることで、スタッフが集中して開発できること。もう1つは、各国から集まる研究機関・大学のチームと競い合うことで、自分たちの技術レベルが世界の中でどのあたりにあるのか、知ることができるというものです。
われわれとしては、DRCを災害対応ロボット開発におけるマイルストーンの1つと考え、参加を決断しました。
――実際に出場してみて、成果はどうでしたか。
金広氏: 目的は必ずしも「優勝すること」だけでは無かったので、何を持って達成できたか判断するのはなかなか難しいのですが、DRCに向けて大変な思いをしながら頑張り、それまでできていたものはより良く出来るようになり、できていなかったものもいろいろできるるようになりました。非常に良い機会だったと思います。
――例えば、どんなことが新たに出来るようになったのでしょうか。
金広氏: われわれの研究グループはもともと2足歩行の研究を中心にやってきました。平地を歩かせることはもちろん、路面が多少デコボコしていても歩けるようにするとか、そのようなことが中心的なテーマでした。
ロボットにはカメラやレーザーレンジファインダなどが搭載されていますが、今まではそれらの情報は使わずに、体の姿勢センサーや足裏の力センサーなどだけで、路面のデコボコに対応してきました。ところが、DRCの不整地タスクのように、コンクリートブロックがゴロゴロ積まれているような状況では、ちゃんと路面を計測しないと安定して歩くのは難しい。
また移動するだけではなく、何か作業することも必要になります。作業となると、物体を認識して、腕を動かさなければなりません。こういったことは、じつはわれわれの研究グループでは、あまりやってこなかったことでした。DRCに参加したことで、これらの部分についてはかなり伸ばすことができたと思います。
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