童夢創業者・林みのる氏が大いに語る――日本レーシングカー産業への提言:【再録】ITmedia Virtual EXPO 2015 春(3/5 ページ)
2015年2月に開催したバーチャル展示会「ITmedia Virtual EXPO 2015 春」では、レーシングカーのコンストラクターである童夢の創業者・林みのる氏へのインタビュー講演をお送りした。林氏が第一線からの引退時期として公言している70歳の誕生日(2015年7月16日)を記念し、このインタビューの模様を記事化した。
本田宗一郎さん生きてたら……
MONOist そのレース活動への投資を日本国内に呼び戻すことができるのでしょうか。
林氏 技術立国日本って標榜しているぐらいね、そんなに世界的レベルからみて技術分野で劣ってるわけでもない。先ほど言ったみたいにずっと海外に流出を続けてきたものを、急に世界のトップクラスの技術を持てというのは無理ですけど、自動車メーカーが、ホンダだってまたもや海外に金を流すようなマネをするぐらいなら、何年かたって技術者を育てれば、日本の産業で育ちますよ。逆に言えば、それをちゃんとやれば、多分10年単位でレース産業の輸出国になるから、貿易収支としては出と入りが変わるぐらいのことはできると思うんだけどね。誰もやらないからずっと流出が続くだけで。
結局、日本の技術レベルでは直接行っても戦闘力ないから、海外丸投げですっていうような本音でしょ。だからあんなもんね、愚の骨頂ですよ。最初、中村良夫さんなんかがやってた時期は日本の技術も入ってましたけど、後は全て丸投げですから。辛うじて作ってるのはエンジンだけでね。インディのエンジンに至ってはイルマーという会社に丸投げですから。あれ本田宗一郎さん生きてたらね、重役皆殺しですよそんなもん。
MONOist 現時点では、日本国内におけるレース活動も海外頼みなのでしょうか。
林氏 海外頼りの流出がずっと続いてきて、戦略が何もないと言うか、ドライバーが中心となって考えてきた世界なんでね。産業の発展なんてことも考えない。ドライバーもちょっと頭使ってね、自分たちがいるフィールドでレース産業が育っていなかったら、自分らの活躍の場も失っていくわけでね。レースカーなんて買ってくりゃいい、俺たちが走って興行収入を上げるんだっていうのには限界があるから、影ではそのぐらいのお金が流れていくんでね。
私なんかはそのレーシングカーは国産化しないといけない、日本の技術を育てなければいけないってずっと言い続けてきたけど、レース界というものはドライバー中心だから、いやドライバーさえ活躍できればいいからということで、外国シャシー買いましょうって今までどんどん買ってきてね。いまだに日本で最大のフォーミュラレースだと自称しているスーパーフォーミュラなんかもイタリア製ですよ。いまだにそういうことやってる人達がやってるんですよ、レースというのは。
だから今回FIA-F4というのを国産化したんです。あれも無理かなと思ったんだけど、最後の最後でトヨタさんが趣旨をまあ認めてね、支援していただいたんで実現しました。あれが無かったらね、あのまま海外ものの輸入にまた走ってしまうことになる。だから多分もう二度と立ち直れないところだったんだろうと思うんだけど。まぁ、ただ私は今年引退しますんで、一応種はまきましたけど、これがどういう風にこれから花開くのか、今後の次世代の人の課題だと思う。
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