第38回 IBISの新しい傾向:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(4/5 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第38回は業界標準「IBIS Model」を制定する業界団体「IBIS」の新しい傾向について解説する。
4.発表の紹介
今回(2014年)のIBIS Summitでは、まずはじめにIBIS Open ForumのチェアマンであるインテルのMichael Mirmak氏から、IBIS Open Forumの活動報告と今後の予定が発表されました。この報告は、世界中、どのサミットでも、必ず、最初のプログラムで、その時々に応じた内容で発表されるものです。
そしてこの中では、「今後は半年に1度程度で、マイナーか、メジャーかのバージョンアップをしていきたい」との発表がありました。それに対しては、他の方から、「バージョンアップが早すぎるとモデルもシミュレータも対応が間に合わず、混乱が生じるので、バージョンアップをもっとゆっくりしてくれないか」との意見も出ました。
次の発表はケイデンスのKen Willis氏の発表で、IBISのパッケージ・モデルの改善の必要性を求めるものでした。1993年に、ケイデンスの伝送線路解析ツールにIBIS Modelへの対応の打ち合わせをしたころの話からはじまり、IBISパッケージ・モデルはその時から、基本的には同じであり、信号の高速化、電源バウンス解析には対応できていない、という内容でした。
その次は、SAEという組織の紹介でした。SAEは多くの標準規格を会員に配信する組織で、会員はSAEのWebページからIBIS規格を含む各種規格を入手できるということです。
IBIS-ATM task groupとはIBIS-AMIにパッケージ定義の新機能を追加したもので、IBIS 6.0以降のバージョンでの規格化を目指しているものです。
続く発表もPackage Modelへの提案です。
そして、午後の発表のはじめはEricssonのIBIS-AMIモデルの精度検証でした。IBIS-AMIモデルについては、かねて原理的な精度の問題、検証の困難性が指摘されていました。Ericssonの検証は、AMIモデルの検証ではもっとも困難なドライバモデル、レシーバモデルのレベルで精度の検証をしようというものです。結論としては、引き続き検証中ではあるが、現在のところ、検証はうまくいっていない、というものでした。
次の発表は、IBISモデルを使った伝送線路解析で以前から問題とされていた問題に対するケイデンスでの検討でした。これはIBISモデルのV-T特性(カーブ)で、信号が立ち上がりきらないか、立ち下りきらないうちに信号が反転するような高速信号(図4)の解析では、解析が正しく行えないというものです(図5)。
なお、今回はケイデンスからの発表が多かったのですが、これは、ケイデンスがSigrityを吸収合併した関係もあります。
次の発表は、各社のIBISモデルを使う伝送線路シミュレータには必ず組み込まれているIBIS Checkの新しいバージョンの紹介でした。このIBIS Checkというソフトは実行形式ならば、IBIS Open ForumのWebページからダウンロードでき、誰でも無償で使うことができます。また、有償でソースコードも入手することができ、各社のシミュレーターに組み込まれています。
発表の最後は、エルピーダメモリを買収したMicron Technologyからの、メモリパッケージングに関する発表でした。
その後のプログラムは、フリーディスカッションでした。
このように今回のIBIS SummitではPackage Modelに関する発表が4つ、IBIS AMIに関する発表が2つと、Package Modelに関する発表が目立ちました。
これらのプレゼンテーションは、今回を含め、過去に開催されたSummitでの発表まで、全てが、IBIS Open ForumのWebページ(http://www.vhdl.org/ibis/summits/)からダウンロードできます。
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