「3Dモデラー」が未来の花形職業になる日:3次元CADベンダー×3Dプリンタベンダーが語る(3/4 ページ)
無償3次元CADツールや数万円で購入できる3Dプリンタの登場により、モノづくりを取り巻く環境やビジネスモデルが大きく変わろうとしている。そうした変化を3次元CADベンダー、3Dプリンタベンダー自身はどのように見ているのか? オートデスクとXYZプリンティングジャパンの担当者が語る。
なぜ日本語化しないのか
志田氏 123D DesignとFusion 360の日本語化は考えないのでしょうか? 3Dデータ共有サイトのように英語への拒否反応もあるのではないでしょうか?
塩澤氏 123DファミリーのPR活動を3年ほど前に日本で行いました。そのころは、「日本語化されていないツールは普及するはずがない」というのが、われわれの認識でしたが、ツールは英語版のみで、Webサイトも英語でした。「頼むから日本語化してほしい」と本社に掛け合いましたがOKが出なかったので、「じゃあ、実績を出してからあらためて日本語化を検討してもらおう」と考えました。
しかし、実際にPR活動を始めてみると、そのような心配は不要でした。イベントやワークショップなどで紹介してみると、ほとんどの方が違和感なく使いこなしていました。「ああ、これは(英語のままで)大丈夫だな」と思いましたね。実際に日本のユーザー数も増えていますし、かなり使い込んでくれています。ですから、今は当時のように日本語化しようとは考えていません。
ビジネスの世界でも「英語だから分からない」では通用しませんし、日本人は英語にもっと慣れた方がいいと、個人的にも思いますしね。
初心者が3Dモデリングできるようになるには?
志田氏 英語のメニュー表記への慣れもあるのでしょうが、初心者の方が3Dモデリングできるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?
塩澤氏 当然、最初は「フィレット」や「モディファイ」って何? となりますが、どのアイコンを押すとどのように変化するのかを理解できれば、ある程度使うことができます。そういう意味でツールを使いこなすハードルはそれほど高くはないと思います。それよりも、単に「3Dモデリングしてみたい」だとか「3Dプリンタを使ってみたい」というだけではなく、「何を作りたいのか」という目標を設定して取り組むことをお勧めします。
また、オートデスクでは、ツールの学習方法の改善にも取り組んでいます。昔のビジネス向けツールはトレーニングを何日か行い、マニュアルを読み、事前知識を得た状態で使い始めていました。しかし、最近の若い人たちは、紙の本ではなく全てWeb検索で、動画があればそれを見るといった具合です。もちろん、検索して動画を見ても作業を完全にマスターすることはできませんが、「こんな感じのことができる」ということが分かれば後は、自ら試行錯誤して習得していきます。こうした発想をヒントに、ゲームをするようにツールの操作を習得できる「ゲーミフィケーション」の要素を取り込み始めています。Fusion 360では、あらかじめ学習用のチュートリアル動画を用意し、習得方法に関して新しいアプローチにトライしています。
海外での3Dプリンタへの取り組みは?
志田氏 教育分野での3Dプリンタ活用も注目されています。日本は少し出遅れている印象ですが、海外ではどのような取り組みがなされているのでしょうか?
新井原氏 中国や台湾は、国を挙げて力を入れている印象です。中国では、小学校約40万校に3Dプリンタを導入する計画を掲げているそうです。台湾では、XYZプリンティングのヘッドクォーターであるXYZprintingと、その母体であるNew Kinpo Groupが学校の先生たちに対して、3Dモデリングと3Dプリンタに関するカリキュラムの作成やレクチャーのサポートを行っています。
台湾は、国策として“未来のモノづくり”を真剣に考えています。「世界の工場」といわれて久しいですが、受託製造だけでなく、自らモノを創り出せる力を得るために、今の子どもたちの世代からしっかりと3Dプリンタ教育をしていこうという気概を強く感じます。日本も頑張らないと、どんどん先に行かれてしまうかもしれませんよ。
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