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カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(後編)いまさら聞けない 電装部品入門(19)(2/4 ページ)

夏場のドライブで大活躍するカーエアコンの冷房機能は、一体どういう仕組みで冷やすことができるのか。後編では、カーエアコンの冷房機能に必要な構成部品と、それらの役割について解説する。

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コンデンサー

 コンプレッサーで高温高圧のガス冷媒になった次の工程で用いられるのが、液化を促進するためのコンデンサー(凝縮器)です。

 見た目も構造もラジエーターと同じで、しかも重ねて配置されているケースが大半です。両者は、内部に冷却水が入っているか冷媒が入っているかが違うだけです。

コンデンサー
コンデンサー

 独特の網目構造は、もちろん表面積を増やすためであり、走行風だけでなく後部に備え付けられているファンを使って強制冷却することもできます。

 ラジエーターファンは一定以上の水温になった場合のみ回転しますが、コンデンサーファンはコンプレッサーの駆動と完全に同期して回転します。

 コンデンサーは高温高圧の冷媒を低温高圧の状態にして液化することが目的ではありますが、冷たいと感じるほど低温になるわけではありません。ここでいう低温とは、あくまでも高圧状態(約1.5MPa)で液化する60℃程度の温度のことです。ちなみにコンプレッサーで圧縮された直後は約70℃ですから、高い圧力はそのままに、冷媒が液化する沸点の60℃あたりまで冷やすことが目的です。

レシーバタンク&ドライヤー

 コンデンサーで完全に冷媒が液化すれば理想的ですが、単純に冷媒を通過させるだけでは全ての冷媒を液化し切ることはできません。

 そこで従来は、コンデンサーの出口にレシーバタンク&ドライヤー(分離/乾燥器)を設置し、液状の冷媒だけを次の工程に圧送していました。しかし現在では、さらに冷却効率を高めるためにサブクールシステムという方式が導入されています。

従来のレシーバタンク&ドライヤー
従来のレシーバタンク&ドライヤー

 サブクールシステムでは、コンデンサーの途中に設置したレシーバタンク&ドライヤーのガス状冷媒と液状冷媒を一時的に蓄え、そこから液状冷媒のみをコンデンサーに戻してあらためて冷却することにより冷房効果を高めます。

サブクールシステムのレシーバタンク&ドライヤー(コンデンサー)
サブクールシステムのレシーバタンク&ドライヤー(コンデンサー)

 ドライヤーという名称が含まれている通り、レシーバタンク内部には乾燥材が入っています。

 冷凍サイクル内に水分が混入してしまうと、通路状に氷となって張り付いたりして機能不全を引き起こす原因になってしまいます。同様に何らかの原因で異物が混入してしまっても機能不全の原因になります。このため、レシーバタンクの出口にはストレーナーが組み込まれています。

 ちょうどこの工程で冷媒量の良否を判断するためのサイトグラスが設けられています。冷媒量が適切でなければ、多過ぎても少な過ぎても冷えない原因となります(コンプレッサーなどの機械的故障の原因にもなります)。サイトグラスの設置位置は、従来のシステムではレシーバタンクの最上部に、サブクールシステムではコンデンサーと次工程であるエキスパンションバルブ(膨張弁)をつなぐパイプに設置されます。

 サイトグラスの設置場所が違うということは冷媒の状況も違ってきますので、システムを十分に理解した上で判断しなければいけません。ただしサブクールシステムになってからは、サイトグラスによる判断が極めて難しくなったため、最近ではサイトグラスそのものを無くしていくケースが多いですね。

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