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IoTで勝ち残るために選ばないといけない“10のポイント”マイケル・ポーターの「IoT時代の競争戦略」(後編)(2/5 ページ)

経済学者マイケル・ポーター氏と米国PTCの社長兼CEOであるジェームズ・ヘプルマン氏の共著であるIoTに関する論文「IoT時代の競争戦略」が公開。その内容を解説する本稿だが後編では、製造業が勝ち残るのに必要な“考えるべき10のポイント”について解説する。

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2.製品に組み込むか、クラウドに置くか

 製品にどのような機能を持たせるかを決めたら、各機能を実現するための技術を製品に組み込むのか、クラウド側に置くのかを判断しなければならない。判断すべきポイントはコスト以外では以下の6つとなる。これらのポイントの長所と短所を理解しつつ、製品の特性を考えていかなければならない。

  • レスポンス時間:発電所の安全停止装置のように短いレスポンス時間が求められる場合、ソフトウェアは製品そのものに組み込んでおく必要がある。接続機能の障害や接続速度の低下により対応が遅れるリスクが生まれるからだ。
  • オートメーション:ABS(アンチロックブレーキングシステム)のように、完全にオートメーション化された製品には、機能そのものを組み込んでおく必要がある。
  • ネットワークの可用性、信頼性、セキュリティ:クラウドにより多くの機能を持たせた場合、製品の性能の多くはネットワーク環境に左右されることになる。また機密データなどが送受信中に漏えいするリスクも抱えることになる。製品に全ての機能を組み込んでおけば、これらのリスクを抑えることができる。
  • 製品の使用場所:遠隔地で操作を行ったり、危険地帯で製品を稼働させたりする場合は、クラウド上に機能を搭載することで危険やコストを低減できる。
  • ユーザーインタフェースの性質:ユーザーインタフェースが複雑で頻繁に変わる場合はインタフェースをクラウド上に持つ方が望ましい。スマートフォンのような既存インタフェースを利用できる可能性も生まれる。
  • 製品やサービスのアップグレード頻度:クラウド上にアプリケーションやインタフェースを常駐させておくと、製品の変更やアップグレードを自動で簡単に実行できる。

3.オープンか、クローズか

 スマートコネクテッドプロダクトは、複数の製品で構成されるモノも多いが、それらの機器を自社だけの製品で構成する閉鎖的(クローズ)戦略を取ることもできる。一方で、規格や技術を開放し多くの企業を巻き込む開放的(オープン)戦略を取ることもできる。

 閉鎖的なシステムを提供する狙いは自社に残る利益の最大化だ。主なインタフェースを独自仕様とし非公開を原則とすることでクローズシステムを構築できる。閉鎖的なシステムを構築できれば全ての要素を自社内に抱えられるため、あらゆる要素を制御して最適化を図り競争優位性を築くことができる。ただ、これを実現する条件は限られる。閉鎖的なシステムを実現するには、多大な投資が必要で、さらに業界内で1社だけが支配的地位にある時に限られる。

 一方、開放的なシステムには誰でも参加できる。そのため多くの協力者が現れ、自社だけでは難しかったアプリケーションの開発やシステムのイノベーションが起こり得る。一方で利益を独占することができないというデメリットも存在する。オープンかクラウドかという2つに加え、この2つを組み合わせたハイブリッド型のアプローチも考えられる。業界標準のインタフェースに対応した上で、より充実した機能を組み込むような場合だ。

 全体として、技術の普及が進んだ場合、選択肢の乏しさが顧客離れを招くため、閉鎖的アプローチを取るのは徐々に難しくなることが予想できる。

4.機能やインフラを内製すべきか、外注すべきか

 スマートコネクテッドプロダクトおよびその製品インフラを新たに開発する場合、製造業にとっては従来なじみのなかった専門技能や技術、インフラに投資する必要がある。製品開発を行う際には、どのテクノロジー階層を自社で開発し、どれをサプライヤーやパートナー企業に委託するのかというのを決めなければならない。さらに外部委託する場合、委託先に独自ソリューションを注文開発してもらうのか、既存ソリューションをライセンス取得して利用するのかを決める必要がある。

 内製化の利点は、製品の特徴や機能性データを思うままに活用できることにある。技術開発の方向性を左右できる他、他社にない学習機会が短期間に得られるため競争優位性を築きやすい。一方で全てにおいて内製化するには莫大なコストが掛かるためほとんどの場合は、テクノロジーの階層ごとに分業するようなケースが増える。

 外注化はリソースの有効活用に効果を発揮するように見えるが、新たなコストを生む可能性があることは留意しておくべきだ。サプライヤーや事業パートナーに頼り過ぎ立場が変われば、より大きな付加価値を要求される可能性がある。また、事業パートナーに頼る企業は差別化の能力が衰えていくことになるからだ。

 「内製か外注か」の判断を行うには、将来的に最も大きな機会を創出するテクノロジー階層を特定し、そこに内製のリソースを集中すべきだと考える。陳腐化しそうななものや進歩が早そうなテクノロジー階層は外部委託の対象とすべきだ。具体的には機器設計、ユーザーインタフェース、システムエンジニアリング、データ解析、ラピッドアプリケーション開発分野においては、十分な能力を自前で持ち続けるべきだろう。

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