バラにトゲあり、ステンレスにワナにあり:甚さんの「サクッと! 設計審査ドリル」(11)(2/3 ページ)
今、さまざまな物に使われているステンレスですが、注意しなければならないポイントがあります。それは何か、あなたはご存じですか?
そして、技術者必携のノウハウ表が、金属の組み合せトーナメント表みてぇなヤツなんだが、……名前をちょいと、忘れちまったよぉ。え〜と、確か、電気的ポテトチップスフライヤー……だったかな?
甚さん、ポテチ揚げてどうするんですか! 「電気化学的ポテンシャル表」ですよ。または、「金属の電気化学的電位表」って言うんです。現場ではそれを縮めて「ポテンシャル表」もしくは、「電位表」って呼ばれていますが(表1)。
オメェは小難しい名前を覚えるのが本当に得意だな。とにかく、表1が技術者必携ってことはよぉ、設計審査の定番質問だぜぃ!
えっ! これも定番質問なんですか? うちの会社では全く質問されないですね。皆、電食という単語すら知らないでしょうし(やっぱり早く転職したい……)
そんじゃ、エリカちゃんよぉ、表1を見ながらでいいから、前回の【問題10】について解説してみろ。
私も最初は分からなかったんですけど、「電食」でピンときちゃいました! 【問題10】の図中の上部ですけど、市販のファストン端子は、錫(すず)めっき同士だから電食は起きません。たとえ錫めっきがはがれて下地の銅が露出しても、錫と銅の組み合せなら電食が起きる可能性は低いですね。
エリカちゃんは、めっきがはがれることまで想定したのか。すごい、すご過ぎるよ!
確かにあっぱれだ。そんじゃ、下部の設計審査で却下になった理由はどうだぁ?
低コスト化で、ステンレス部品の端部にファストン端子のプラグ相当部を設けたのは名案だと思ったのですが……。
錫めっきとステンレスの組み合せでは、電食が起こることはないのですが、錫めっきがはがれて下地の銅が露出し、銅とステンレスの組合せなら電食が起きる可能性は高くなります。なぜでしょうか?
SUS304はオーステナイト系ステンレスと呼ばれます。このとき、表1から、オーステナイト系ステンレスと銅の組み合せでは、電食は起こりづらいと考えられます。しかし、ステンレス材をせん断、曲げ、絞り、溶接などの加工を施すと、その箇所が「加工硬化」を起こし、さびやすくなる、あるいは磁化します。
ここからが学問ではなく、職人の世界へ入っていきます。つまり、当事務所のクライアント企業に対しては、加工硬化の有無を吟味した上で、表1の材料は、あえて「軟鉄」を選択し、軟鉄と銅の組み合せで判断することを指導しています。特に注意すべきは、「SUS304とアルミの組み合せ」です。
「そんなはずはない!」という意見は大歓迎です。その疑問を解消してくれるのが、実証(実験)です。いずれも実証(実験)が不可欠です。
エリカちゃんはすごいなぁ。さすが、行列ができる寿司屋の大将「辰兄ィ」の娘っ!
過去の設計案件でこういうトラブルが実際にあったのをふと思い出したんですよ。私は国木田さんと違って学問的な話はちょっと苦手で、実務がきっかけで覚えるタイプですから……。やっぱり、ほめられるとうれしいですね!(早く転職したーい♪)
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