「魂動デザイン」は販売店にも価値を生み出しているのか:クルマから見るデザインの真価(2)(5/6 ページ)
車両デザインを通して、「デザイン」の意味や価値を考えていく本連載。第2回は、第1回に引き続きマツダの「魂動(こどう)デザイン」を取り上げる。高い評価を得ている魂動デザインだが、販売店にとってどのような価値があるのだろうか。小型SUV「CX-3」のインプレッションと併せて紹介する。
「デミオ」と「CX-3」で異なるキャラクターラインの使い方
ブックエンドの一端となるCX-3だが、周りをぐるりと歩きながら眺めてみると、プラットフォームを共用するデミオと比べて、より前後方向に伸びやかに感じるのではないだろうか。サイズが少し大きいせいもあるが、そう見えるような造形も仕込まれていることに気が付く。デミオやアクセラもそうなのだが、魂動デザインのコンパクト系モデルでは、ボンネットの上面からボディのサイドに跨るキャラクターラインが走っている。このキャラクターラインを側面から見ると、デミオやアクセラでは、フロントホイールの上側辺りに凸カーブの頂点を描くような流れを作っている(図中の緑色のライン)。フロントホイールを強調して、踏ん張ったイメージを強調させる際に使われる手法である。
対してCX-3では、側面から見たときの凸カーブの頂点をより後ろ側のAピラー近くまで持ってきている。これはフロントホイールを覆うフェンダーの存在を強調するには効果が弱いが、物理的な数値以上にロングノーズに感じさせることを狙える手法である。CX-3におけるホイールの存在感の強調は、ブラックのフェンダーガーニッシュに、SUVっぽいイメージと併せてその役割を任せている。
この他にもドアサッシュや、デミオにはないDピラーまでブラックアウトしていることで、サイドのウィンドウ面として感じる部分を上下方向はより薄く、前後方向にはより長く見せている(図中のオレンジ色のライン)。その相乗効果でボディカラーが残る部分は視覚的に片持ち屋根のようになることから、Aピラーからルーフに流れ去るようなもう1つの流れが前後方向の伸びやかさを感じさせる要素に加わっている(図中の黄色のライン)。デミオとホイールベースは同じながら、CX-3にはデミオにはない18インチホイールの設定があるのも、デミオと異なる印象を感じさせるのに一役買っている。
CX-3のみならずクロスオーバーSUVは、昔でいうところの「スペシャリティカー」のイマドキの形態と言っていいのかもしれない。発表会のプレゼンテーションの中での「次世代のスタンダード」という表現に、納得できるところと、どこなくモヤモヤしたものを感じるのは、筆者の中にこういう認識があるからなのだろう。
CX-3のインテリアの質感は、他の魂動デザインモデルと同様に、機能面・デザイン面での「鮮度」がそろっており、セールスポイントに寄与しそうだ。それ以外で注目されるのが、新しいボディカラーである「セラミックメタリック」である。これは端正さを求めたボディデザインの見せ方として、石こう像をイメージしたところが開発のきっかけだったそうだが、光の質や当たり方によって色の見え方が大きく変化するのが特徴だ(関連記事:「CX-3」のボディ新色「セラミックメタリック」は白でもシルバーでもない)。
白かと思えばグレーがかって見えたり、そうかと思えばマットカラーに近く見えたりして、いろいろな光の下で眺めてみたいボディカラーである。写真では分かりずらいので、興味を持たれた方は、ぜひディーラーに脚を運んで実際の色の変化を体感してみてほしい。
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