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EMS大手の新金宝グループは、なぜ3Dプリンタを自社ブランドで展開するのか製造マネジメント インタビュー(1/3 ページ)

「生産拠点としての中国」を取り巻く環境が変化する中、台湾系EMS企業を取り巻く環境も変化が進んでいる。その中でいち早くグローバル生産体制を構築し製造業の「グローバル最適地生産」の支援を進めているのが新金宝グループだ。同グループはEMSでありながら、3Dプリンタや植物工場などで独自ブランド製品を展開するなど先進的な取り組みを見せる。同グループCEOの沈軾栄氏に話を聞いた。

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 PCやスマートフォン、デジタルカメラなど、現在多くの製造業が製品の製造を委託しているのが、台湾系EMS(電子機器生産受託サービス)企業だ。台湾系EMS企業はその多くが中国を生産拠点として活用する。同じ文化、同じ言葉を使う利点を生かし、安い人件費や豊富な労働力を使いこなして成長してきたといえる。しかし、人件費の高騰や政治的なリスクにより「生産拠点としての中国」の位置付けが変わりつつある中、台湾系EMSも岐路に立たされている(関連記事:iPhoneを製造するフォックスコンは、生産技術力をどこで身に付けたのか?)。

 その中でいち早くグローバル生産体制を整え、多くの製造業の“グローバル最適地生産”や“地産地消”ニーズに応え、成長を続けているEMS企業がある。新金宝グループ(New Kinpo Group)だ。同社はEMSとして先進的な取り組みを進める一方で、3Dプリンタや植物工場などで自社ブランド製品を展開するなど、革新的な取り組みを次々に進めている。これらの取り組みの背景には何があるのだろうか。同グループ CEOの沈軾栄(Simon Shen)氏に話を聞いた。

中国より先にタイに工場を設立

MONOist 現在の状況を教えてください。

沈氏 新金宝グループは、金宝グループ(Kinpo Group)傘下のEMS企業で、1973年に設立された。プリンタ関連製品や基盤実装、ストレージ関連製品のODM(Original Design Manufacturing)などを請け負い、2014年の売上高は約72億米ドルとなっている。日本の顧客も多く抱えており、MFP(MultiFunction Printer)や電卓、電子ピアノなどの生産を設計・生産などを請け負っている。

 また、2013年には3Dプリンタを自社ブランドで展開するXYZ printingを設立。日本法人も設立し、日本でも展開を開始している。台湾では自社ブランドでパーソナル植物工場製品なども展開しており、新規分野に積極的に進出している(関連記事:3Dプリンティング技術で生活を豊かに――パーソナル3Dプリンタ市場に攻勢をかけるXYZprinting)。

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新金宝グループCEOの沈軾栄氏

MONOist まず主力のEMS事業についてお伺いします。台湾系EMSは主力となる中国の生産環境の変化に苦しむ状況があると思いますが、こういう環境の変化についてどう考えていますか。

沈氏 多くの台湾系EMS企業は、同じ言葉、同じ文化であることを生かして中国に生産拠点を設立し、その労働力や人件費の安さなどを武器に成長した。これは実は非常に簡単なことだ。そして今、中国での事業環境が悪化し、中国以外の国々に進出するのに苦しんでいるという状況だ。しかし、その状況はわれわれには当てはまらない。われわれは台湾発のEMS企業だが、最初の国外工場を1989年にタイに設立した。それ以来、主力工場の一角をタイが占めている。タイでの生産は25年以上に及ぶ。

 当時は政治的背景もあり、台湾からも中国に対して直接投資するのに制限があった。他の企業はその抜け穴を狙って進出し、中国での生産を実現したが、われわれは正式な外資への開放があるまで待つ判断をし、タイに先に生産拠点を作った。タイへの拠点展開当初は異なる文化、異なる言語、難解な規制などに苦しんだが、現在グローバルに生産拠点を展開するのに、この経験が生きている。文化や言語などの背景によらずに、安定した生産体制を築くことができるノウハウを積むことができたからだ。

 その後、中国にも生産拠点を築き、現在は、台湾の他、タイ、中国、フィリピン、マレーシア、メキシコ、ブラジルに18の生産拠点を展開している。ASEAN地域では現在3万人の従業員を抱えるほどの規模となった。

 例えば、ブラジルの生産拠点は約3年前に設立し1800人が働いている。立ち上げ当初にはアジアから120人の人員を派遣し、現在も80人がそこに駐在し、世界の他の拠点と同じオペレーションを行えるようにしている。これらの経験を経ているため、既に世界中のどこに新たな生産拠点を築いたとしても問題ない状況になっているといえる。それが他の台湾系EMSにはないわれわれの強みになっている。

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