デジタル技術の発展が実現する“予防”医療社会:医療技術ニュース(1/2 ページ)
IEEEが開催したプレスセミナーで、アクセンチュア Data Science Center of Excellenceを務める工藤卓哉氏が、近年の医療分野におけるデータ活用について語った。医療分野のデジタル化が進みデータ活用の可能性が広がることで、病気の発症を未然に防ぐ予防医療の分野の発展が期待されているという。
IEEE(米国電気電子学会)は2015年3月10日、東京都内でプレス向けセミナーを開催し、アクセンチュア Data Science Center of Excellenceを務める工藤卓哉氏が、近年の医療分野におけるデータ活用について説明した。医療分野のデジタル化が進みデータ活用の可能性が広がることで、病気の発症を未然に防ぐ予防医療の分野の発展が期待されているという。
医療分野にも波及するデジタル技術の進歩
工藤氏は、近年の医療分野へのデジタル技術の波及事例として、Googleが開発を進めているスマートコンタクトレンズを紹介した。これは糖尿病患者向けに開発されているもので、小型のグルコース(血糖)センサーを用いて、涙に含まれる血糖値を計測できるというものだ。血糖値が一定の数値を超えた場合、レンズに搭載されたLEDが点灯することで、ユーザーに警告も行える(関連記事:涙で血糖値を測るスマートコンタクト、Googleが開発へ)。
スマートコンタクトレンズのような、“スマート化”した医療機器の登場により、リアルタイムに個人の詳細な生体情報の取得が可能になりつつある。工藤氏はその可能性について「例えば糖尿病患者が血液中のグルコースを検査する頻度は、1日に数回という場合が多かった。しかし、Googleのスマートコンタクトレンズでは、1秒ごとに計測できる。これまでより高い価値のデータが取得できるようになり、個人の体質の差を把握したり、最適なタイミングで正しい治療方法を選択することが可能になる」と語る。
デジタル化の推進により予防医療の分野に可能性が
工藤氏は、こうした医療分野におけるデジタル化の進展によって得られる詳細なデータが、実際に医師が行う医療行為の前段階である予防医療分野の発展に貢献する可能性について説明した。
同氏はその一例として、自動車メーカーであるモータースポーツやスポーツカーを手掛けるMcLarenグループ傘下のMcLaren Electronicsがレーシングカー向けに展開しているセンシングシステムを活用して、乳児突然死症候群の早期発見を可能にした事例を紹介。「デジタル化が進むことで、ITベンダーなどこれまで医療に関係していなかった企業も、データを活用することで予防医療に貢献できる可能性が生まれている」(工藤氏)と説明する。
その一方で同氏は、「ウェアラブルデバイスや、ビッグデータ分析といった大きなトピックに話題が集まる傾向にある。しかし、医療のデジタル化が進み、データ活用の可能性がさらに広がっていった場合、最終的には地道なデータの積み重ねを行った企業が成功するのではないかと感じている」と語った。
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