世界一になったが、コマじゃない!? でもルールはセーフ! 物議醸した「世界コマ大戦」:メカ設計イベントリポート(2/5 ページ)
町工場が持てる技術とアイデアを直径2cmのコマに注ぎ込むコマ大戦。今年は海外勢や高校生も加わり、いっそうの盛り上がりを見せた。“世界一”に輝いたのは、考え抜かれた超異端コマ。優勝コマがどうしてルール違反ではなかったのか説明しつつ、カジミツ松宮氏による構造図と共にその仕組みについても触れる。
コマたちはバラエティ豊か
コマ大戦の試合はトーナメント形式(※)で、直径25cmの土俵の上にコマを投げ、土俵から出るか、または接地面が先に止まった方が負けとなる。2回続けて勝てば次の対戦へと進める。コマ形状は、回転軸に対して直径が2cm以下、高さが6cm以下となっている。材質・重さ・形は問わない。重くして当たり負けしないことを狙ったものや、軽量化によって持久性を高めたもの、回すと変形したり相手に応じてパーツを組み替えたりするものなど、チームそれぞれの技術やアイデアを詰め込んだコマが作られる。
なおコマの動きや勝敗の判断には細かい基準がある。「そこまで必要なのか!?」と思ってしまうようなルールもあるのだが、そのルール変更に少なからず影響を与えてきたのが、さまざまなアイデアのコマを作ってきた今回の日本の決勝戦進出チームだ。
決勝戦は蓋を開けると世界大会らしく、海外チームと日本チームの戦いとなった。以降では決勝進出チームを中心に、今回初登場となった海外や高校生のチームも紹介する。
コマなのか? コマなのか!?
今回注目だったのは、何と言っても優勝した「審議隊トミーとマツ――カジミツ」のコマだろう。同チームはカジミツ(愛知県半田市)の松宮政美氏と安久工機(東京都大田区)の福富善大氏のコンビだ(中日本ブロック枠で出場)。バラエティ豊かなコマがそろった中でも、その存在感と不気味さは格別だった。
カジミツのコマの初登場は1回戦の対ゼヨン機械(韓国)戦だ。
黒椙田ゆうじ氏が「とうとうあのチームが出てきてしまいます。会場の皆さんは、これから悪夢を見ることになると思います」と実況したが、まさにその通りの展開となった。
行司の掛け声で両チームがコマを置くと、会場にどよめきがあがった。ゼヨン機械のコマはきれいに仕上がった“コマらしいコマ”なのに対し、カジミツのコマは規定最大寸法いっぱいの、どう見ても“金属の円柱”というコマらしからぬ外見だったからだ。コマとは思えないくらいゆっくりと回転し、土俵上での動きもまるで地を這っているかのようだった。
徐々に2つのコマが近づいて接触し、ゼヨン機械のコマは何度か接触しながらカジミツのコマの周りを回った後に、力なく倒れてしまった。ゼヨン機械は2戦目で投げ方を変えたものの、カジミツに敗れた。
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