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インタビュー

「NDロードスター」は「魂動デザイン」のセンター中のセンターマツダ デザイン本部長 前田育男氏インタビュー(2/4 ページ)

2012年2月発売の「CX-5」以降、「アテンザ」、「アクセラ」、「デミオ」と新世代商品の販売が好調なマツダ。その商品力を支えるデザインテーマ「魂動(こどう)−Soul of Motion」を生み出した、同社執行役員 デザイン本部長の前田育男氏に、魂動デザインを導入した意図や、今後のマツダデザインの方向性について聞いた。

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野生動物の無駄のない動きがヒントに

MONOist 魂動デザインにおける「動き」のイメージとして、チーターなどの野生動物が例に出ることが多いのですが、これにはどういった理由があるのでしょうか。

前田氏 「動き」には色んな表現の手法があります。人工的に作ろうと思ったらいくらでも作れてしまう。でも、実際に動いているもので、最も自然でどんな環境にもなじんで溶け込んで行くものは何だろうと考えました。その答えが野生動物だったのです。彼らは、趣味で動いていません。生きるために動いているから、動きに全く無駄がない。あの無駄のない動きのオーラや緊張感をすごいと感じて、これをヒントにしようと決めた。

MONOist そのことは、魂動デザインの源流ともいえる「靭(SHINARI)」を発表した2010年9月の時点で決まっていたのでしょうか。

前田氏 今のポジション(デザイン本部長)についてから1年間、色々と試行錯誤した結果、発表したのがSHINARIです。もちろん、野生動物の動きをモチーフにするという考え方も反映されています。

魂動デザインの源流ともいえる「靭(SHINARI)」
魂動デザインの源流ともいえる「靭(SHINARI)」(クリックで拡大) 出典:マツダ

MONOist ブランド作りのための一貫性というのもSHINARIの時点で考えていたわけですね。

前田氏 今のポジションになる以前、車両のチーフデザイナーを担当していた時から、一貫性というものが必要だというのは持論でした。個々のクルマを、個々の裁量でユニークなものとして作り続ける限りは、ブランドは絶対に作れません。だからこそ、もし今のポジションになるのであれば、必ずデザインに一貫性を持たせようと考えていました。

100%を注ぎ込んで作ったのが「靭(SHINARI)」

MONOist ただ、デザイン本部長の言うことだからといって、今までとデザインの方針をガラリと変えるというのは簡単なことではなかったと思います。

前田氏 結局のところ、デザインは口で言って説得できるものではありません。だからこそ、私の持てる100%を注ぎ込んでSHINARIを作りました。そしてそのSHINARIを見て、マツダのマネジメント層が「これはいい!」と思い、感動してくれました。だからこそ魂動デザインの今があります。SHINARIはそれくらい重要なものでした。

MONOist コンセプトカーというと、実際には作らない、売らないクルマで、あまり意味がないという意見もあります。

前田氏 SHINARIは、単なるコンセプトカーやショーカーではなく、新しいジェネレーションの方向性を示すビジョンモデルであり、いわば御神体のようなものです。

 これからも、意味のないにぎやかしのようなコンセプトカーを作るつもりはありません。もちろんそのまま商品にはなりませんが、今後生まれてくる商品に確実に生かされていくという意味で、コンセプトカーやビジョンモデルの設計に責任を取りたいと考えています。

MONOist 実際に、2012年11月にアテンザが発表されたときは、コンセプトカーの「雄(TAKERI)」とほぼ印象を受けました。

前田氏 TAKERIはアテンザのターゲットであり、ギリギリ量産できる形に落とし込んであの形になりました。コンセプトカーであれビジョンモデルであれ、そのテーマが色んなクルマに応用されていったときにどんなことになるのかというのをある程度描いて開発しなければなりません。量産を意識して作るというのは、われわれ工業デザイナーの責任だと思います。

「アテンザ」のターゲットとなった「雄(TAKERI)」
「アテンザ」のターゲットとなった「雄(TAKERI)」(クリックで拡大) 出典:マツダ

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