図面が読めない人とモノづくりする“プラスチック屋”さん:zenmono通信(1/2 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、プラスチックを使った製品開発を手掛けるテクノラボ 代表取締役 林光邦さんにお話を伺った。
本記事はモノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から転載しています。
enmono三木氏 テクノラボさんでは、どういったお仕事をされているのでしょうか?
林氏 仕事内容は大きく分けると3つ(デザイン構想・設計試作・生産)あります。まずデザインや構想の提案から始まります。次に、設計と試作をします。私どものお客さまは、図面を読めないお客さまがほとんどです。設計の承認は図面ではなく、試作の造形モデルで承認をしていただいています。承認後、金型を製作して量産します。
enmono三木氏 デザインから生産まで受けていらっしゃるのですね。
林氏 今、日本でモノを作るとなると少量です。少量の場合、1個当たりの値段を考えると初期費用にお金を掛けられません。そのためには、初期費用の中で一番ウェイトを占める金型のコストをどうやって圧縮するかという話になります。デザインから入っていかないと、金型費って削減できないんですよ。部品点数も増えるし形状も複雑で金型費が掛ってしまうデザインに決まった後では、コストダウンができない。ですから、デザインを描く時点である程度金型をイメージして、作り手の視点からデザインを提案しています。これは(以下キャプチャ)デザインスケッチからのCGで、ルータ、ルータケース、パネル型PCです。
林氏 弊社はプラスチック屋なので、無線系が多いですね。プラスチックは電波を通すので。どうしてもプラスチックで作らならければならないとか、無線端末は高額で意匠性が高くないと高額なものとして売れないので、「どうしてもデザイン・インしたい」といったお話をいただきます。
enmono三木氏 こちらの新幹線は?
林氏 東北新幹線で売られているお弁当の箱です。他にも、防犯用の窓センサーや携帯用湯沸し器など、さまざまなデザインを描いています。どれもアグレッシブに挑戦したデザインではありません。「今の流行でいうとこんなもの」とか、「こんな商品だったら競合商品と比べてそれなりに魅力が出せる」という範囲の中で、新しい商品の外装を作るとしたらどんなものが良いか考えています。
enmono三木氏 試作品は3Dプリンタで製作されているのですか?
林氏 3Dプリンタ系(のモノづくり)は圧倒的に多くなってきていますが、使われる用途によって変わります。いわゆる造形品かもしれないし、切削品かもしれない。社内にある造形装置は3Dプリンタの一種ですが、全て自社の設備を使ってやってしまうと、本来お客さまが欲しいものではなくなってしまいます。3Dプリンタにもそれぞれ特長があるので、外のラボにお願いして、作る用途によって選択しています。
enmono三木氏 お客さまは中堅・中小企業が多く、一部、大手企業や個人の方もいらっしゃるそうですが、個人のお客さまは増えてきていますか?
林氏 アイデアはあるけれども手(手段)がない方が非常に増えました。3Dプリンタが安価になり、さまざまなメディアに取り上げられるようになって、利用する方も増えて、「これを量産できないか」と3Dプリンタで作ったものを持って来られる方もいらっしゃいます。
enmono三木氏 テクノラボさんは個人のお客さまを敬遠せず、積極的に対応されているのですね。
林氏 弊社は設立が2004年で、非常に若い会社です。「今更、プラスチック業界に新参で入っても仕事はない」という状態でスタートしました。その後、大手メーカーが海外に出てさらに仕事はなくなりましたから、個人の方ですとかモノづくりがあまり分からない中小企業と一緒に仕事をするしか選択肢がありませんでした。結果的に、デザインから金型製作までやる弊社のスタイルが合うのは、そのような方々なのです。
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