“ありのまま”を目指せ! 真に効率的な設計は「自然界」にあり:Autodesk University 2014(1/2 ページ)
「Autodesk University 2014」の基調講演では、米Autodesk社長兼CEOのカール・バス氏、CTOのジェフ・コヴァルスキ氏が登壇し、モノづくりにおける環境の変化と同社のビジョンについて紹介した。
米Autodeskは2014年12月2日(現地時間)、同社のユーザー向けイベント「Autodesk University 2014」(米国ラスベガス、会期2014年12月2〜4日)の基調講演として、同社社長でCEO(最高経営責任者)のカール・バス(Carl Bass)氏と同CTO(最高技術責任者)のジェフ・コヴァルスキ(Jeff Kowalski)氏が登壇し、コンピュータと現実の世界の垣根が低くなっていることを強調。バス氏はこれらの変化に対応する同社の戦略を語った一方、コヴァルスキ氏は長期的な同社の開発ビジョンについて紹介した。
コンピュータの力を現実の世界で生かす
バス氏はまずコンピュータの進歩およびデジタル技術の進歩により、生活に大きな革新が広がっていることを強調。「コンピューティングパワーが進化を遂げ、われわれの生活は大きく変化を遂げている。一番大きな変化がリッチなデータにアプローチできるようになった点だ」(バス氏)と述べる。現実の生活におけるさまざまな情報をコンピュータに取り込むには数多くの限界があったが、これらをキャプチャーするさまざまな技術が発展。現在はカメラやセンサーで自動でリアルタイムに3次元モデルなどを作成可能だ。
その効果的な例としてバス氏は映画「アバター」を例に挙げる。「アバターでは、役者の動きをセンシングして、それをコンピュータに取り込みCG(コンピュータグラフィックス)で再現することで、今までにないリアルな映像を実現した。このように現実のモノをコンピュータの力を利用して補完することに大きな価値がある」と語る。
離れた場所でも協力可能に
またデジタル技術に発展がもたらした2つ目の革新として、いつでもどこでもリアルタイムでさまざまな形でつながることが可能となり、協力して仕事を行うことができるようになった点を挙げる。コラボレーションツールを活用することで、世界各地に点在したデザイン担当者が協力して1つのモノを作ることができるようになる。
米国で2014年9月に先行して導入したクラウドベースのコラボレーションサービス「A360 Team」は、製造業を中心に6万人以上のユーザーに利用されているという。ライブデジタルネットワークでつながり全てのCADデータや書類など全てのアクティビティを共有することが可能。またクラウド型の3次元CADである「Fusion 360」も同じモデルに同時にアクアセスでき、遠隔地の共同設計などを実現。またWebブラウザ対応としたため、端末に縛られない利用を実現したという。
創造力を高めデザインからリアルへ
またバス氏は新たなモノづくりの可能性として3Dプリンティングを挙げる。ただ「複雑な形状のモノを簡単に作れる利点はあり、多くのポテンシャルがあるのは事実だが、まだそのポテンシャルを生かし切れていない。『遅い』『利用範囲が限定的』『高すぎる』『信頼性が低い』などだ。これをオートデスクが変革する」とバス氏は力を込める。
同社では、既に3Dプリンティング用のオープンソフトウェア基盤である「Spark」を開発し、外部展開を進めている。またこのSparkを活用するリファレンスモデルとして3Dプリンタへの参入も表明。同日から受注を開始し、2015年1月から出荷を開始すると発表した。バス氏は「3Dプリンタの進化を促すためにエコシステムを作る。オープンソフトウェア、オープンハードウェア、オープンマテリアルで展開を進め、技術革新につながえていきたい」と話している。
加えてバス氏はその先として「3Dプリンタだけでなくさらなる革新も計画している」と話す。「コンピュータの力、デジタルデータの力を物理的な現実の世界に持ってくる。産業用ロボットとの連携やロボットと3Dプリンティング技術の融合など、新たな価値をもたらしたい。例えばデジタルデザインと相性のいいCNCマシンを使えば、従来考えられなかったさまざまなモノを作ることができる。デジタルと物理の境界線は変わってきており、さまざまな可能性が生まれている」とバス氏は語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.