呼気で病気を診断、米大学が開発:センシング技術(1/2 ページ)
米国の大学が、医療診断向けの呼気分析装置を開発した。呼気には約1000種類の化合物が極めて低い濃度で含まれているので、その中から特定の呼気バイオマーカーを検知するという。
一回大きく深呼吸するだけで、肝機能や血糖値などを測定できるとしたらどうだろう。米国ニューヨーク州立大学のストーニーブルック校(State University of New York, Stony Brook)の研究グループが、それを実現する医療診断用の呼気分析装置を開発した。血中アルコール濃度による診断は、もはや過去のものになるかもしれない。
ストーニーブルック校の材料工学部で教授とディレクタを兼任するPerena Gouma氏は、「人間の呼気には、1000種類以上の化合物が極めて低い濃度で含まれている。今回開発した呼気分析装置は、呼気を収集して特定の呼気ガスバイオマーカーを検出し、その濃度を数値化する。また今回、極小サイズのナノワイヤーで被覆したセンサーチップを開発したことにより、呼気中のごく微量の化合物を検出できるようになった」と述べる。
鼻の機能を模倣
Gouma氏が開発した結晶化学センサーで使われているナノワイヤーは、一酸化窒素や一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、アセトン、イソプレーン、ベンゼン、エタン、ペンタンなどの特定の化学物質に対して反応し、ワイヤーに収集された粒子の量によって濃度を測定するという。これらの粒子をデータ化することで、さまざまな疾病との相関関係を示すことが可能だ。結晶性ナノワイヤーのアレイは、鼻の機能を模倣しているという。長さ100μmの1本の結晶性ナノワイヤーで、シリコンベースの多結晶膜に比べて、表面積、ガス感度ともに100倍を実現できるという。
例えば、呼気中のエタンおよびペンタンの濃度が1〜11ppb(10億分の1)の場合、酸化的ストレスがあることを示す。また、アンモニア濃度が200〜1750ppbの場合は、腎不全であることが分かる。Gouma氏によると、軍事用途として、イソプレーン濃度を測定することで兵士たちの疲労度や睡眠時無呼吸を検知するというような使い方も想定されるという。
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