エンジンルームでも利用可能な温度補償用積層セラコン、TDKが280品種に拡充:車載電子部品
TDKは、150℃までの使用温度範囲を持つ車載対応の温度補償用積層セラミックコンデンサ「CGAシリーズ」のラインアップを拡充する。従来は、定格電圧が50Vと100V、静電容量が100p〜100nFの約200品種だったが、定格電圧を250V、450V、630Vまで引き上げるとともに、静電容量も220nFまで高めるなどして約280品種に増やした。
TDKは2014年10月28日、150℃までの使用温度範囲を持つ車載対応の温度補償用積層セラミックコンデンサ「CGAシリーズ」のラインアップを拡充すると発表した。従来は、定格電圧が50Vと100V、静電容量が100p〜100nFの約200品種だったが、定格電圧を250V、450V、630Vまで引き上げるとともに、静電容量も220nFまで高めるなどして約280品種に増やした。サンプル価格は、5750サイズ(5.7×5.0mm)で定格電圧が450V、静電容量が100nFの品種で100円。2014年11月から、同社の秋田地区において、月産500万個で生産を始める。
温度補償用積層セラコンとは?
積層セラミックコンデンサは大まかに2種類に分けることができる。1つは平滑やノイズ対策などに用いられる高誘電率系の製品だ。静電容量が大きい一方で、温度変化による容量変化が比較的大きいのが特徴。もう1つは、電子回路を構成する際に必ず必要になる容量成分の部品として用いる低誘電率系の製品である。静電容量は小さいものの、温度変化に対する容量変化は極めて小さい。変化率を表す容量温度係数は±30ppm/℃となっている。このように周囲温度に対して容量が一定であることから、低誘電率系の製品は「温度補償用」と呼ばれている。
米国電子工業会(EIA)は、−55〜125℃の使用温度範囲で容量温度係数が±30ppm/℃に収まる温度補償用積層セラミックコンデンサの特性を「C0G」と定義している。しかし、より使用温度範囲が広い−55〜150℃の場合、EIAは特性を定義していない。このためTDKは、独自に「NP0」という特性で呼んでいる。
今回品種を拡充したCGAシリーズは、車載電子部品の品質規格であるAEC-Q200に準拠するとともに、NP0特性を持つ温度補償用積層セラミックコンデンサである。1005サイズ(1.0×0.5mm)の「CGA2」、1608サイズ(1.6×0.8mm)の「CGA3」、2012サイズ(2.0×1.25mm)の「CGA4」、3216サイズ(3.2×1.6mm)の「CGA5」、3225サイズ(3.2×2.5mm)の「CGA6」、4532サイズ(4.5×3.2mm)の「CGA8」、5750サイズの「CGA9」がある。
品種を拡充した理由
TDKによれば、今回のCGAシリーズの品種拡充は、顧客の需要を先取りする形の提案型の取り組みだという。
車載半導体や車載電子部品の「150℃対応」は、エンジンルーム内での利用が可能なことを示している。TDKの担当者は、「最近になってアクチュエータやモーター、ソレノイドなどと制御回路を統合する『機電一体』というトレンドが進展しつつある。この機電一体を実現するには、150℃対応の温度補償用積層セラミックコンデンサにより多くの品種が必要になるはずだ」と説明する。
また、定格電圧を引き上げる方向で品種を拡充したのは、定格電圧が50Vや100Vの現行製品では対応できない高電圧系の電動システム向けの需要を掘り起こす意図がある。「現在のハイブリッド車や電気自動車の電動システムは、水冷システムを使うことにより、125℃までしか対応できないC0G特性の温度補償用積層セラミックコンデンサで済ませている。そこで、150℃対応の温度補償用積層セラミックコンデンサを使えば、水冷システムよりもシンプルな空冷システムを利用可能になるはずだ。最終的には、電動システムの小型化や軽量化につなげられるだろう」(TDK)。
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