マツダが「SKYACTIV-D」を開発できた理由は「内燃機関が好きだから」:今井優杏のエコカー☆進化論(14)(4/4 ページ)
ほんの数年前まで、国内市場では売れないといわれてきたディーゼルエンジン車。その認識を変えたのがマツダのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」だ。今回は、国内のディーゼルエンジン車市場が回復してきた背景とともに、新型「デミオ」とそのエンジンである排気量1.5lのSKYACTIV-Dについて説明しよう。
割り切った結果のシングルターボじゃなかった
そして2.2lと1.5lの大きな違いであるターボは、2.2lがツインターボのところを、1.5lはシングルターボを採用しています。
ボンネット内のスペースに限りがありますから、この辺の割り切りはしょうがないかなと思ったら、ただのシングルターボじゃなかった。
ターボの前に可変ノズル機構を設けた可変ジオメトリーシングルターボは、2つから1つに減ったターボ数を効率的にカバーするものです。そもそもターボというものは、排気ガスを利用してタービンを回すものです。すなわち排気ガスが少ない領域ではあんまり効果的じゃないということでもあります。
しかしこの可変ジオメトリーシングルターボは、電気的に排気ガスの流量が少ないときにはノズルを絞って流速を上げて、向きも適正にコントロールしてタービン羽根に効率よく当てるので、きちんと過給圧を得られるという仕組み。口をすぼめてフーっと息を吐き出し風車を速く回すイメージかな。これでレスポンスやトルクに優れた走行が、低回転域から楽しめるのです。ちなみに暖気性能が必要とされるときには、ノズルを全閉にして排ガスをシリンダー内に戻すという芸当も可能です。
また、燃費向上とNOx低減のための排気再循環(EGR)を高圧と低圧の2つで採用している他、水冷インタークーラーをインテークマニホールドに内蔵して吸気回路の距離と容量を低減するなど匠の技は枚挙に暇がありません。
この技術解説をしてくださったマツダのパワートレイン開発本部で新型デミオのエンジン&トランスミッションの開発を担当された新畑耕一氏は笑って、「予算が膨大にある会社じゃないですから、こうしてどうにか既存のものを使えないかと、そればっかり考えているんです」とおっしゃっていましたが、いやいや。だからこそ破格の価格でクリーンディーゼルを楽しめるわけですから。
しかも今度のデミオはクルマとして、商品としての完成度もメチャクチャ高いです。
走りがいいけど内装がね……と言われたのはもう、過去の話!
ナビゲーションシステムを内蔵する「マツダコネクト」ももちろん全車に備え、しかもピニンファリーナ的な香りすらする内装に大注目!
もう走りだけじゃないです。完全に本命カー。これは売れますよ〜。
で、なんでメリットの少ないディーゼルエンジンをマツダがわざわざ作ったかっていうと、多分マツダが社を挙げて「内燃機関が好きだから」。
こんなシンプルかつ熱い情熱でクルマを作っているなんて、すごくすてきなことだと思いませんか?
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