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国力低下が製造業の土台を揺るがす!? ――日の丸製造業の現在地ものづくり白書2014を読み解く(前編)(2/4 ページ)

人口のおよそ4人に1人が65歳以上の高齢者。国民1人当たりの生産性は世界20位以下。円安なのに貿易赤字は膨らみ、国の経常収支は縮小続き……。アベノミクスで経済情勢は上向きとされるのが、モノづくり大国・日本の先行きはどうも心もとない。果たして、日本の製造業はどこに向かうのか。経済産業省「ものづくり白書」の最新版(2014年版)から、現状と動向を探る。

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国家としてのモノづくり基盤の弱体化

 国家としての日本の現状を見てみよう。

 外資系企業が世界で大きく売上高を伸ばし日本企業が苦戦する中、日本は貿易赤字の拡大による経常収支(貿易収支、サービス収支、第一次・第二次所得収支、経常移転収支の総計)の悪化に苦しめられている。

 ものづくり白書によれば、日本の経常収支は、貿易収支が赤字に転落した2011年以降、縮小を続け、2013年には過去(統計上比較が可能な1996年以降)最低の約3兆5000億円にまで落ち込んでいるという。

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図5:日本の経常収支推移(出典:財務省・日本銀行「国際収支統計」)(クリックで拡大)

 また、経常収支縮小の主因である貿易赤字は、2012年に約6兆円、2013年は約11兆5000億円に達しており、2014年度にはさらに増えるとの見方もある。

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図6:日本の貿易収支の推移(出典:財務省「貿易統計」)(クリックで拡大)

 貿易赤字が膨らんだ理由として、ものづくり白書では、原子力発電所の稼働停止による鉱物性燃料(石油・原油・天然ガス・液化天然ガスなど)の輸入増や燃料・原材料価格の高止まり、さらには、海外景気低迷による輸出の落ち込みなどを挙げている。ただし、財務省貿易統計を基にした下表を見ると、2013年の輸出がそれほど落ち込んでいるとは思えない。

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図7:日本の輸出総額と輸入総額推移(出典:財務省貿易統計を基に編集部が作成/単位:100万円)(クリックで拡大)

 例えば、図7のデータからは、2013年の輸出総額が69兆7700億円強となっていることが分かる。この数値は2006年や2007年よりは悪いが、2009年以降で最高の数字で、8兆7000億円強の貿易黒字を出していた2005年よりも約6%高い。問題は、その伸び以上に輸入総額が膨らんでいる点にある。これは、アベノミクスの円安誘導が鉱物性燃料はもとより、食品・原材料などの輸入価格を押し上げた結果と見なすのが自然だろう。ものづくり白書が指摘するように、原発の稼働停止が石油・ガスの輸入量を増やしている面もあるが、その増加分による燃料輸入額の上昇が貿易赤字の大部分を担っているとはいえない。その他の輸入金額も大きく増加している。

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