悪戦苦闘して作ったモデルって、何だか愛おしい:モデルベース開発奮戦ちう(5)(4/5 ページ)
ついに、ハイブリッド車「バンビーナ」が燃費世界一を目指す上で重要な役割を果たす変速機「CVT∞」の制御設計を始めることになった、京子たち三立精機の制御設計チーム。悪戦苦闘しながらも、制御モデルの設計やECUへのソフトウェア組み込みなどの作業を着実に進めていく。
HILSって手ごわい!
同じころ、五十嵐さんはHILSの構築に取り組んでいた。従来の量産品のECUを接続しても動かないのだ。五十嵐さんは、HILSは使用したことがないけれども、CAE開発部でプラントモデルの開発を行っていたので、今回のプロジェクトではHILSの専任者を務めることになった。
まずはHILSの仕組みを理解しないといけないなぁ。
でもそこは優秀な五十嵐さん。HILSの仕組みをすぐに把握すると、入力と出力をピックアップして、その信号条件を明らかにした。その上で、マニュアルの手順を見て、以前から使用しているシミュレータをイメージして入出力の画面を作成した。
続けて、ECUの出力信号がHILSの入力に、そしてHILSの出力がECU内部に正しく取り込まれていることを確認する。しかし、表示される数値がECU内部をモニターした値と合っていない。
プラントモデルとECUの間で物理量の単位が違っていたみたいだな。
物理量の単位系の見直しを行い、変換を行う部分を組み込んでから、プラントモデルの組み込みに移行した。プラントモデルの入出力をHILSの入出力に接続していく。HILSはリアルタイムで動作するので、MILSと同じプラントモデルをそのまま組み込めい場合があり、離散化が必要になる。五十嵐さんは、JMAABのプラントモデリングガイドラインを参考にモデルの修正を行い、ソルバも離散ソルバに調整した。
プラントモデルは詳細化を追求すると、実行時にランタイムエラーになる場合がある。複雑すぎてサンプル時間内に処理が終わらないからだ。その場合はプラントモデルの簡素化が必要になる。よく行われるのは、数式で処理していたものをマップに変更することだ。
マップの作成はデータを多くとる必要があるから、大変だなこりゃ……。
私にはできそうもない作業を五十嵐さんは淡々とこなして行き、ようやくHILSへのプラントモデルの組み込みにも成功。試作ECUをHILSと接続して動作させることができた。
HILSを効率的に使うため、テストケースの検討とユーザーの教育が行われることになった。テストケースの検討は、制御設計チームが実施。ユーザー教育は、マニュアルを基に3人のテストエンジニアに対して五十嵐さんが担当した。また、HILSのデモンストレーションも行った。制御設計チームの一同が見守る中で、HILSは着々と試験を実行していく。
やっぱり早いわね。
それに正確ですよ。何度でも繰り返しできるので、回帰テストが楽になります。
HILSのデモンストレーションに同席していた、テストエンジニアのリーダーである坂田さんもうなずいた。
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