基板変更を繰り返して高めた感度、GPS+電波「GPW-1000」誕生までの苦労:製品開発インタビュー(2/2 ページ)
世界で初めてGPS電波受信と標準電波受信を組み合わせた時刻取得システムを搭載した腕時計「G-SHOCK GPW-1000」が発売される。GPS電波受信の腕時計を実用的なモノとするため、開発陣が重ねた苦労とは。
基板を幾度も変更してまで高めたGPS感度
――GPS内蔵デジカメなどを使った経験からすると、GPS=情報取得までの時間がかかるデバイスというイメージがぬぐえません。
川口氏 携帯電話網など補助的な手段がない以上、GPS電波による時計合わせは(衛星電波を拾いやすい)周囲が開けたところで行ってくださいとお願いするしかありませんが、情報取得までの時間は高速化できていると思います。
情報取得に必要な時間を短縮する時刻取得モードの実装に加えて、外装金属部品の影響がどれだけあるのか、どのように部品配置をすれば感度が上がるのかなど、GPSアンテナの感度を高めるためにさまざまな試行錯誤を行っています。
尾下氏 時計各部品は樹脂としたほうが受信感度への悪影響は出にくいのですが、金属部品を配置した方が質感は高くなります。今回はデザイン面も考え、ベゼルやシャフトなどには金属部品を採用しようと決めました。
ですが、裸基板の状態で計測していた結果がケース(時計外装)に入れた途端、出なくなったり、回路の中で発生したノイズで精度が落ちてしまったり、苦労は多かったですね。
川口氏 ケースにしても、仮のケースでOKだと思っていたら、完成品ベースのケースに入れたら思っていた精度が出なかったりと、外装との兼ね合いには時間がかかりました。ですが、デザインは先行して決まっていたので大幅な部品変更を行うことはできず、基板変更を始めとした内部の変更で対応していきました。
――省電力化や金属部品の低減という意味からすると、文字盤に金属針を使うアナログ式ではなく、デジタル式を採用するほうが有利に思えます。
岡本氏 私たちはここ10年ほどアナログ腕時計に注力していこうという方針を掲げていましますし、新製品については製品企画の段階から電波時計の進化というイメージを持っていました。
文字盤をデジタルにするとトレッキング用の「PRO TREK」やランニング用の「PHYS」のように「用途のある時計」という意味合いが強くなるのです。新製品については純粋な「腕時計」として、「電波&ソーラー」の次となる形を作ってみたかったのです。
――そうして商品化に至ったGPW-1000はG-SHOCKとしてはやや大ぶりながらも許容範囲内と言えるサイズですが、「オシアナス」や「エディフィス」などに搭載できるほど、「GPSハイブリッド電波ソーラー」の機構は小型化できるのでしょうか。
岡本氏 GPSアンテナや電池のさらなる小型化が必要ですね。
尾下氏 GPW-1000で使用している電池は電波式腕時計に比べて大きめで、筐体内基板で抱えるように配置するしかありませんでした。これを重ねて配置できるようになれば薄くできますが、同時にアンテナの小型化も必要ですね。
GPS回路の消費電力は電波受信回路に比べて2桁多いのですが、状況としては昔、電波時計に取り組み始めたころもそうでした。既存製品に比べて消費電力は大きく、針を駆動するモーターの消費電力も大きかったのです。
GPSハイブリッド電波ソーラー機構のさらなる低消費電力化、薄型化に課題は山積していますが、「腕時計の進化」を目指すため、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
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